採用コラム

新人と教育係のマッチングに配慮せよ

新人が入社したとき、誰が教育係を担当するのか。
たいていの場合、直属の上司や少し年上の優秀な若手社員を教育係に任命することが多いでしょう。
この教育係のマッチングは新人を定着させる上で非常に重要ですが、意外に難しいものです。
単に優秀な社員を任命すればよいというわけではないからです。
ある会社に新人が転職してきたときのことです。
この会社の社長は教育係として若手のエース格をつけることにしました。
年齢は新人の少し上でモチベーションが高く、凄まじいほどの仕事量をこなし
卓越した成果を出している社員なので、そばで見ているだけでも
学ぶことがたくさんあるだろうと考えたのです。
その後、面談で様子を尋ねると新人はこんな感想を述べました。
「あの先輩は同じ人間とは思えません。働き方が超人的すぎます。
自分はとても先輩のようになれる気がしません……」
社長の狙いとは裏腹に、エース格の先輩社員が圧倒的な業務量をこなす姿を目の当たりにして「自分にはとても無理そうだ……」という挫折感を味あわせてしまったのです。
この社長は先輩社員と同じようになれと言っているわけではない。
君には君のやり方があるだろうから、それを確立すればいいとなだめましたが、
結局、この新人はその後間もなく退職してしまいました。
一方、配属された部署で直属の上司が教育係になることも多いと思います。
このとき、新人にとっておかしな上司の下につくほど絶望的なことはありません。
私自身も経験があります。
リクルート時代、仕事に不備があり上司がその上の上司から「なんでこんなことになったんだ?」と問われ、自分が命令したにも関わらず「やったのは私ではありません、丸山君です」と答えたときの衝撃は今でも忘れられません。
しかしその後、上司の上司が私を呼び出して「実際、どうなっていたんだ」と確認してきたのでありのままを伝えると、「やっぱりそうか」と言っていました。
彼は上司がおかしな人間であることをちゃんとわかっていたのです。
その後、私は別の部署に異動になりました。
上司との相性の悪さを認識してくれていたからの措置だったと思います。
おかしな上司の下に新人をつけると、辞められる可能性が高まります。
おかしいとまで言わなくても、相性が悪い組み合わせだとやはり長続きしない可能性が高い。
こうしたマッチングの相性もきちんと観察し、問題があれば配置換えするなどの措置が必要です。
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「採用の失敗」を検証するには、面接におけるジャッジメントと
自社の教育体制の二つがポイントであると以前述べました。
そして自社の教育体制を検証し見直そうとするとき、
経営者や経営幹部が注意すべき点があります。
それは自分たちが若い頃、現場の最前線で活躍していた時代と
現在の若手社員を取り巻く環境は大きく異なるという事実です。
「俺たちが現場にいた頃は、自分で先輩や上司のやり方を盗んだものだ」
「新人に手取り足取り教えてやるなんて生ぬるい」
人一倍努力して成功した人ほどそう感じるかもしれません。
しかし現状において、そんなことを言っていたら独り立ちする前に退職する新人が増える一方です。
こう言っている私自身、完全に納得しているわけではないのですが、
基本的にはある程度、新人のフォローを手厚く行う方向にならざるを得ないでしょう。
人材紹介業においても、私自身が最前線に立って営業したり若手社員を育成したりしていた時と比べ
物事の動くスピードが圧倒的に速くなり、それゆえいろいろなことが複雑化しています。
たとえば、私が最前線にいた時代は、候補者がやり取りをする相手は基本的に私1人でした。
昔は選び抜いた渾身の一社を提案し、候補者もその一社の話だけを進めていき、
最後はその会社に決まるか決まらないか、という流れだったのです。
しかし現在は1人の候補者が同時に複数の人材紹介会社のキャリアコンサルタントとやり取りを行い、
一度に5社も10社も応募し、その中から転職先を決めるようになっています。
競合も案件も増え、結果的に決定数はそれほど変わらないのかもしれませんが、
以前に比べ仕事の量は大幅に増加し、非常に忙しくなっています。
昔のシンプルなやり方はもう通用せず、業務が複雑化しているのですから、
いきなり新人を放置して「頑張れ」というだけでは、初めに登る山としては高すぎます。
最初のうちは上司や先輩社員が伴走して成果を出しやすくしてあげたり、
注力すべきポイントを教えてあげたりしないと、惜しい人材が早期離職してしまいます。
現在でも放置して勝手に育つ人材はいるでしょうし、手厚くフォローしても脱落する人はいるでしょう。
しかしちゃんとフォローしてあげれば一人前に育つのに、ちょっとしたことでつまずいたり
不運が重なったりしたために脱落してしまう人もいます。
自分たちの時代の感覚で新人教育を行うと、こうした不幸を増やすことになります。
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