「面接でこれさえ聞けば相手のことがよくわかる」
そんな質問はないかと聞かれることがあります。しかし、そんな魔法のような質問は残念ながらありません。採用において「この質問の答えがYesだったからOK」、というような機械的な判断もありえません。
面接官の質問力を上げるにはどうすればよいか、というご相談をいただくこともありますが、やはり面接の本来の目的を意識することが大切だと思います。面接の目的とは応募者をよく理解し、適切なジャッジを行うことにあります。
そして応募者の理解には事前の準備が非常に重要です。具体的には、応募者の書類をきちんと読み込むこと。しかし、少なからぬ面接官がこの準備を怠っているため適切な質問ができず、応募者の理解が十分でない状態でジャッジを行っています。
面接前に応募者の書類を読み込むと「この人はこんな人物なのかな」とある程度イメージが浮かんでくるでしょう。ただしそのイメージは完全なものではなく、何らかの欠けている部分があるはずです。
「なぜ大学で金属工学を専攻していたのに新卒で全く関係のない業種に就職したのだろう」
「この人は大手商社に勤務していたのに、なんでこの会社に転職したのか」
書類を読み込めば読み込むほど、そんな風にいろいろな疑問が湧いてくるはずです。それらについて一つひとつ質問し、「なるほど、そういう目的があったんだ」とその答えを理解できれば次の質問に移り、「その答えはちょっと理解できない」「少し引っかかるな」と思えばさらに突っ込んで質問していく。これが面接における質問の基本的な考え方です。
一つ事例をご紹介しましょう。先日、私は自社の採用面接で一人の男性にお会いしました。書類を拝見すると現在の会社に10年在籍されていて、入社してから毎年、全社で営業成績トップを続けているというすごい実績の持ち主でした。ただし、よく見ると2009年の順位の記載がありません。2009年といえばリーマンショックの翌年ですから、成績がボロボロで都合の悪いことは書かなかったのかなと一瞬思いましたが、リーマンショックで成績がボロボロになるのは他の社員も同様です。いったい何があったのでしょう。
この点について面接で質問すると、彼の答えはこうでした。
「実際、自分の成績はボロボロだったのですが、営業ランキングも何もないくらい社内が混乱してしまい、自分が何位だったのかわからないんです」
会社の売上は半減し、200人いた社員も自主退職が続出し100人以下に減ったそうです。その答えで私の疑問は解消されたわけですが、そこで新たな疑問が湧いてきました。会社が危機に陥ると優秀な人から辞めていくと言いますが、なぜそんな大変な状況でこの人は辞めなかったのでしょう。質問するとこんな答えが返ってきました。
「会社から強く慰留されたことと、正直、上の人がどんどん辞めていったので、まだ若い私にもいっぱいチャンスがあると思ったからです」
その答えを聞いて、この人は大した人材であることがわかり、危機的な状況でどんな行動をしたのかも把握できました。
このように書類から浮かんだ疑問を深掘りし、新たに湧いた疑問について詳しく質問していくことによって、その人の核心を理解するうえで重要な話が出てくるのです。
WP_Post Object
(
[ID] => 1389
[post_author] => 4
[post_date] => 2015-12-02 15:33:00
[post_date_gmt] => 2015-12-02 06:33:00
[post_content] => 前々回で応募いただいた方を理解するには「価値観」と「能力」という二つの切り口が重要になると指摘しました。今回は採用面接で応募者の能力をどうやって見極めるかについてお話します。
応募者に必要とする能力は当然、業種や職種によってまったく異なります。同じ会社のなかでも確実にミスなくやり続け、かつ業務改善に取り組んで地道に効率を上げていくような仕事から、ゴールだけが明確であとは臨機応変に対応して成果を出していくような仕事が同居しているわけです。したがって、まず企業側がその採用においてどんな能力を求めているかを明確にしなければなりません。
一口に「営業力」と言っても、新規開拓に強い人もいればアカウント営業に強い人もいます。コンサルティングセールスもあればルートセールスもある。そのなかでどの能力が欲しいのか。応募者の能力の話になると「あれも欲しい、これも欲しい」となりがちですが、自分たちが何を求めているか明確にしないと失敗します。新規開拓力を求めているのに、単に営業成績トップだからといってアカウント営業に長けた人を採用するようなやり方をすると、すぐに辞められてしまうでしょう。
求めている能力次第で面接で聞く内容も当然変わってきます。もし新規開拓の能力を求めている企業の面接に、年間1億円売り上げているという営業マンが応募者として来たとしましょう。
「新規顧客と既存顧客の割合はどれくらいですか?」
「新規8割、既存2割です」
「それはすごい。8割って社数ですか、それとも金額ですか」
「社数です。全部で15社です」
「なるほど、どうやって開拓したんですか」
求める能力を明確にすると、こんな風に深掘りしていくポイントも自ずと明確になります。
ちなみに当社のコンサルタント採用においては試行錯誤の結果、法人営業経験を必須の条件にしています。コンサルタントはエントリーいただいた候補者との面談スキルが重要ですが、社内にそれを教えるプログラムが豊富にあり、その道のプロもいっぱいいるので、未経験でもポテンシャルがあれば十分できるようになります。
しかし法人営業経験がなく、新規開拓や数字のセンスが身に付いていない人は、当社ではなかなか難しい。これは能力というより価値観に近いかもしれませんが、目標達成意欲や数字に対する執着心は法人営業で揉まれた経験がないとなかなか身に付かないようです。
ただし、「必須の能力や条件を明確にし、当てはまる人しか絶対に採用するな」と言っているわけではありません。実際の面接ではあらかじめ定めた条件から外れてはいるが「この人は絶対いける!」という人と出会うことがあります。ですから当社でも法人営業経験を必須としながらも、「欲しいと思った人を採れ」と私は採用担当の社員に言っています。求める基本的な条件を明確にしつつ、例外的な応募者へ柔軟に対応することも採用の重要な心得です。
[post_title] => 求める能力があいまいな採用は失敗する
[post_excerpt] =>
[post_status] => publish
[comment_status] => closed
[ping_status] => closed
[post_password] =>
[post_name] => 23
[to_ping] =>
[pinged] =>
[post_modified] => 2019-03-06 15:15:19
[post_modified_gmt] => 2019-03-06 06:15:19
[post_content_filtered] =>
[post_parent] => 0
[guid] => https://www.kandc.com/kc-saiyo/column/1245/
[menu_order] => 0
[post_type] => column
[post_mime_type] =>
[comment_count] => 0
[filter] => raw
)