採用活動において、私たちはクライアント企業に「社長が自ら一次面接をする」ことをお勧めしています。その理由は候補者に対し最も強力なフォローを行えることに加え、人事担当者が普通に一次面接を行うと、会社を変革する可能性を持った「型にはまらないタイプ」を見逃してしまうことが多いからです。
一方、社長面接だけで即座に内定を出してしまう会社を見かけることがありますが、これはお勧めできません。こういう場合、私たちは「社内の誰でもいいですからもう一回面接して下さい」と、あえて選考ステップを一つ増やしてもらっています。なぜならたった一回の面接だけで採用が決まると、応募者が「選ばれた感」を持てないからです。
「一回面接しただけで、まだ充分なやりとりをしていない段階で内定を出すのは、選考をかなりいい加減にやっているのではないか…」
そんな不信感を持たれてしまう可能性もあります。
誰でも人は「選ばれたい」と思っており、就職はその最たる場面の一つです。納得感のある選考と、その結果として選ばれたという感覚を与えられれば、これから入社してくる人のやる気と会社への信頼感を高めることにつながります。
社長面接だけで内定を出してしまう弊害には、応募者が社長以外の社員と会わない状態で入社しなければならないということもあります。普段一緒に働くことになる職場の上司や同僚がどんな人たちかをまったく知らないまま内定を出されても、応募者はかえって不安に陥ってしまうでしょう。
一回の面接だけで内定を出そうとする背景には「グズグズしていたらこの人を他社にとられてしまう…」という焦りや切迫感があるのかもしれません。しかし拙速すぎては逆効果。検討を重ねた結果、ぜひあなたを採用したいという「選ばれた感」をしっかり演出することが大切です。
もし候補者が非常に優秀な人材で、他の会社に取られたくない。どうしても早く入社するかどうか結論を出して欲しいという場合、こんな風に言ってみるとよいでしょう。
「他にも候補者はたくさんいるのですが、私たちの評価はあなたが一番です。よろしかったら早めに結論をいただけないでしょうか。もしお答えがノーだったら、二番目の方に声をかけますから」
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[post_content] => 応募者に対しフォローを行う目的には、数多くある会社のなかから自社を選んでもらい、採用すべき人を採用することと同時に、しっかりモチベーションを高めてもらい入社直後から活躍してもらえるようにする、いわば入社前教育の要素があります。
そこでは自社情報の提供が非常に重要で、マイナス情報を含めしっかり伝えることが大切です。「マイナス情報を伝えると候補者に逃げられるのではないか…」と心配し、充分に伝えない会社もありますが、かえって良い結果にはつながりません。入社前に良いことばかり聞かされて希望に燃えて入社してきた人が、実際に会社の内情を目の当たりにして「こんなはずではなかった…」とやる気を萎えさせてしまうのはよくあるケースです。
良いところも悪いところも把握したうえで、「この会社で頑張る!」というやる気と覚悟をもって入社してもらう。そんな情報提供の仕方が必要なのです。
問題はマイナス情報をいかに伝えるかでしょう。そのポイントは、マイナス情報の背景情報まで一緒に伝えること。マイナス情報の背後には何らかの事情や経緯があります。それを含めてきちんと伝えるのです。
たとえば、自社の離職率がかなり高かったとします。その背景には会社の方針として社員全体のなかで評価の低い一定割合の人に退職を促す方針だったり、成果主義を強調した評価制度になっていたり、さまざまなものがあるはずです。そうした背景までさかのぼって伝えていくことです。
マイナス情報はプラス情報と表裏一体のことが少なくありませんから、そうすることで候補者はマイナス情報をマイナスのまま受け取るのではなく、その逆側にあるプラス面に気が付いたり、会社が置かれている状況を理解したりできるようになります。
マイナス情報が社長自身の悩みである場合もあるでしょう。そのときは、自分が悩んでいることも含めて伝えてしまうのも一つのやり方です。たとえば、営業系と技術系が対立して困っている会社で企画系の社員を採用しようとしている場合、「対立を放置していいとは思っていないのでこれから手を打っていくつもりです。ただ、最初は苦労をかけるかもしれません」と率直にお伝えしていく。
もちろん、マイナス情報を聞いて引いてしまう候補者もいるかもしれませんが、覚悟して入社を決める人もいます。いずれにせよ、会社にとって必要なのは後者です。
マイナス情報を伝えるにはタイミングの問題もあります。8割方「この会社で頑張ろう」と応募者が決めた段階でマイナス情報を伝えると、決意が揺らぐことはあまりありません。むしろ「ちゃんと自分を信用してマイナス情報を話してくれた」と前向きに受け取ってもらえることの方が多いです。
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