前回まではどうして日本の就職活動の構造が負のスパイラルになっているのか説明しました。そしてこのままの状態では良くありません。海外との競争の中で、日本の学生の力、つまり学力や知的能力を伸ばすことが重要であり、そのためには現在のスパイラルを変えていく必要があります。どのようにスパイラルを変えていけばよいのでしょうか。
学生は自分にとってメリットがなければ動かない、学校の教授もメリットがないと動かないとなれば、企業がなんらかの形で大学の成績を参考にする、もしくは学業に興味を持つ動きを作るしかありません。
「大学の成績を参考にする」、「学業に興味を持つ」という動きが出るとスパイラルは一気に解消します。何度も述べていますが、まず企業が成績を少しでも参考にする努力をすることが重要です。
例えば参考に出来そうな授業だけ、もしくは学業に対して興味を持ち、学生に対して「どうしてその授業を取ったのか」と問いかけます。さらにその中でも厳正に「考える力」を評価している授業に対して興味を持ち、授業の成績に対しても興味を持つと様々な変化が起こります。もちろん、現段階では、学生が真剣に授業を受けているかどうかはわかりません。しかし採用選考時に成績がなんらかの形で評価されていると知ると、学生は同じ時間を使うならちゃんと成績を評価している授業を取り、その授業の成績をあげようと努力をします。
なぜなら、そうすることが就職活動で有利になると思うからです。すると今まで真剣に授業をし、厳正に成績を評価して学生に嫌がられていた教授の授業に学生がきちんと出席し、単位さえ取れれば良いのではなく最評価を取ろうと努力するようになります。
このように教授にとってメリットがしっかりと目に見えるようになると、真剣に授業をする教授が増え、更には厳正に評価をする授業が増えていき、より一層企業にとって参考に出来る授業が出てきて、成績が信頼できるものとなっていきます。
スパイラルを解消し世の中の動きを変えていくためには、企業が成績を活用することが重要です。
残念ながら、大手企業をはじめ多くの企業は採用選考のエントリー時に成績表を提出させていません。
今までの状況を整理しますと、大学の成績の評価はいい加減で、学生も真剣に授業を受けていないので文系学生の採用選考において成績を参考に出来ない仕組みになっているのは仕方ないことだと 思われてきました。
しかし、成績を活用することはスパイラルを解消する大きな手段になります。
そして実は成績表が採用選考において極めて有効に使えることがわかってきました。
こちらに関しては次回書かせて頂きます。
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なぜ大学生が勉強しない状況が、20年以上も放置されたまま続いてきたのでしょうか?これがここ数年の新しい現象であるならば、問題の根っこはそれほど深くない可能性もあります。ですが、20年以上も続いているとなると、どうも構造的な問題が潜んでいる可能性が濃厚です。問題の根っこは、どこにあるのでしょうか?
日本の大学教育に問題があることは、これまでも多くの方が指摘してきました。それらは、誰を「悪者」にするかという点で、大きく3つのパターンがあります。
1つ目は、大学生自身を悪者にするパターンです。
「ゆとり世代でやる気がない」
「大学進学率が高すぎて全体のレベルが落ちている」
などが代表的なもので、メディアがよく言う批判です。
2つ目は、大学を悪者にするパターンです。
「大学の先生は社会に出たことがないから現実がわかっていない」
「きちんと教える気がなく、ただレジュメを読み上げているだけ」
などが代表的なもので、こちらは主に大学生が持っている不満でしょう。
3つ目が「就職活動」、ひいては企業を悪者にするパターンです。
「就職活動が、大学教育を邪魔している」
「就職活動の早期化が学業を妨げている」
などで、これは大学の先生が好む批判です。
これらはいずれも、確かに物事の一面をとらえています。ですが、全体を見通せていない「偏った意見」だと言わざるをえません。
私は、日本の大学教育の問題は、学生・大学・企業の三者がお互いに影響を与え合う「構造」そのものにあると考えています。以下で、この「構造」について説明していきましょう。
1.企業としては、大学の成績はあてにならないので、採用の参考にしません。
2.学生としては、マジメに勉強しても「得」がありませんから、簡単に単位が取れる授業を選びます。
3.先生としては、教育に真剣に取り組むと、自分の講義を選択する学生が減ります。それよりは、簡単に単位を与えるようにして、
自分の研究に力を入れるほうがメリットがあるし、楽です。
4.学生としては、簡単に単位をくれる授業も多いし、卒業だけなら簡単にできます。
やっぱり、マジメに勉強しても「得」がありません。
5.(=1.)企業としては、大学の成績はあてにならないので、採用の参考にしません。
いかがでしょうか?見事な「負のスパイラル」が完成しています。
当事者全員が自分の利益を最大化した結果、「勉強しない大学生」が生み出されているのがわかると思います。
日本では20年以上前から、この負のスパイラルが「勉強しない大学生」を量産し、日本の国力を落としているのです。
[post_title] => 日本は大学成績に対する信頼感の低さが「大学生は学業に力を入れても報われない社会構造」になっている
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