採用コラム

Column Vol. 37

日本の就職活動の構造の変革には企業が成績の活用を始める必要がある(3)

多くの企業が、面接場面でエントリーシートや履歴書を見ながら面接を進めるのではないでしょうか?

実はそれがストレス耐性や新型うつのリスクを判断する面接とは離れてしまう理由です。

ここではエントリーシートを俯瞰してみましょう。

・本人がやりたかったことを中心にエントリーシートが書かれており、それをもとに面接が行われる。もともとエントリーシートに書かれていることは、アルバイト、サークル等の課外活動でのイベントを中心に書かれているのではないでしょうか?

それらは、学生が自分の意志で、好きで始めている「やりたい活動」「モチベーションが高い状態の活動」が大半です。本人にとってやりたいことではなく、やらなくてはいけない場面での行動が書かれていることは少ないのではないでしょうか。

・やりたかった領域の中でも特に得意なこと、頑張ったことのみに焦点が置かれる。

また、エントリーシートには主に学生はやりたかった領域の中でも自分の伝えたいことのみを書いています。

例えば、得意なことや頑張ったこと、成果が上がったことなどを伝えています。逆に言えば伝えたくないことに関しては一切書かれていません。つらかった経験を聞いていても、本当につらい経験は書かれませんし、話されません。つらかった経験からの克服を通していい印象をもってもらえる内容を選んで書いているはずです。

・評価されやすいように話を脚色する。

やりたかったことの領域の中でも一部の得意なことや頑張ったことのみを伝えるばかりか、話の内容を脚色することも一般的になっています。

学生間では「話を盛る」という言い方をしますが、サークルの人数を変えて話したり、サークル内での役職を偽ったり、サークルで行ったイベントの結果を変えて話したりする場合も多いようです。

以上のようにエントリーシートや履歴書を使った面接、または何も使わない面接では結果的に
・本人にとってしたい活動、モチベーションの高い状態での行動で
・本人の伝えたいことのみの情報を
・本人の自己評価や脚色された話から
学生の本質を知る努力をしているのです。

皆さんが本当に知らないといけない、やらなければならないこと、モチベーションが高くない時にどのように行動するのか、きちんとこなすことが出来る人なのかを知るのは極めて難しいことです。

しかし、やらなければならないことに関して知る方法があります。多くの学生にとって学業はしたくないことであり、モチベーションが低いものです。つまり学業に関して面接で質問をするのは極めて有効なのです。

成績を活用することが採用活動において有効なのだということはお分かり頂けたと思います。

次回は成績をどのように使ったらよいのか、具体的な方法をお話します。

文 / 辻 太一朗
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前回お伝えした通り、今回は成績を活用することがいかに有効なのかについてお話します。

現在の成績は厳正な評価がなされていないので採用選考時に使えないのではと考えている皆さん、少しお待ちください。

実は現在の成績からでもわかることがたくさんあります。

最近、こんなトラブルはありませんか。

仕事において本人がしたくないことは極めて精度が低い、本人がやりたいことは嬉々とこなすがそうでないことは急に表情が変わってしまう、更に言えば急に会社にこなくなってしまうなどです。

実際の仕事の場面において採用場面でのイメージと違ったという話を耳にします。

最近では「新型うつ」などという病気まで出てきています。

このような入社後のトラブルの多くは、本人にとっても「したい仕事」ではなく、「しなくてはいけない仕事」の場面で起こっているのではないでしょうか。

本人にとってモチベーションが高い状態ではストレスの問題は起こりにくいものです。問題が起こる多くの場合は、本人にとって必ずしもモチベーションが高くない状態に起こります。

すなわち、採用選考の面接においてはモチベーションが高い時だけでなく、モチベーションが必ずしも高くない時の行動や考え、やりたいことをしている場面だけでなく、やらなくてはいけないことに対する認識や責任感を知る必要があるのです。

ここまで書いたところで、「ストレス耐性や、新型うつへのリスクに関しては市販のテストで対応している」とおっしゃる方もおられるのではないでしょうか?

しかしテストにはいくつかの課題もあります。

一つ目は多くのテストは、質問に対して回答する形式です。言い換えれば自分で答えを選択できます。

下記はあるテスト問題の抜粋です。
・将来の不安なことについて考えることがよくある
・仕事の能率が悪い人を見るとイライラする
・短気で怒りっぽい性格だ
・自分のことについて考え始めると止まらない
・いつも自分の感情を抑えてしまう

それぞれの質問に「はい」「いいえ」のどちらがストレスに強いかわかりそうではないですか?

二つ目はテストによってはネット上で対策が氾濫していることです。

そして、この二つ以上に大きい要因がテストで「注意を要する」というような結果でも、面接で全く気にならなければ採用することが多いということです。

人は誰でも目の前で話している印象が、テストの結果よりも優先したくなるものです。

ですからやはり面接でストレス耐性や、「新型うつ」のリスクを判定することが重要です。

では、なぜ面接においてこのような人を見極めることができないのでしょうか。

その理由を現在の採用選考において、学生は3つのポイントからしか話をしていないのではないでしょうか。

多くの企業では、面接時にエントリーシート等を見ながら質問をすることが多いはずです。

実はそのエントリーシートをツールにすることが大きな問題なのです。

3つのポイントに関しては次回にお話させて頂きます。

文 / 辻 太一朗
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