採用コラム

Column Vol. 38

日本の就職活動の構造の変革には企業が成績の活用を始める必要がある(4)

前回は、皆さんが本当に知らないといけない、やらなければならないこと、モチベーションが高くない時にどのように行動するのか、きちんとこなすことが出来る人なのかを知る方法として学業に関して面接で質問することが極めて有効であるとお話しました。

今回は、具体的にどのように成績を活用すればよいのか説明したいと思います。

学業での行動確認の進め方(どのような順番で質問をするのか?)

①学業と学業外活動の力の入れ方の確認  ⇒力の入れ方の配分を知ることで、学生の大学生活全体感の把握ができます。

 

*例 1,2年は学業が3割くらいで、3年からは学業が7割
 ⇒どうして力の入れ方が変化したのか?就活に関連しているのか?
  学ぶことに対する考えの変化があったのかどうか?

 

*例 自分で授業料をだしているので学業が5割
 ⇒学ぶこと(費用がかかること)に対する意識が他の学生と違う可能性、
  自分で学費を出している要因は何か?

②その力の入れ方をベースに授業選択の考え方の確認
 ⇒学業は、学生にとって「しなければならないこと」「学ぶということ」
  あるいは「対価がかかっていること」(対価:年間約100万円程度の授業料)です。
  それに対するとらえ方、考え方、行動の仕方がわかります。

 

*例 『社会研究入門ゼミ』など、発表することが求められる授業は役に立つと考え、
   履修しました。
   社会人になったら、会議やコンペで発表・プレゼンをする機会が多いと思ったので。 
 ⇒将来のメリットを感じていれば、今の努力をする(長期視点を持つ)実際での授業の受け方は?

*例 授業に出席したのなら、前の方に座り聞いていました。
 ⇒功利的、ある状況下でのパフォーマンスを高める志向、周りに流されない、自発的

③興味があった(なかった)、または興味が出てきた(なくなった)授業内容と理由の確認
 ⇒積極的でないことに対する興味の持ち方(失い方)や授業の捉え方の水準等がわかります。

 

*例 中国が政治・経済両面において伸長している現状を踏まえ、
   第二外国語は中国語、そして一般教養科目講義でも
   『中国社会論』『中国文化論』などは、興味を持っていました。
 ⇒長期の将来の必要性に対しての興味・行動、長期の功利性、目的志向性

*例 現代都市論はだんだん興味がでてきました。毎回宿題があり、
   先生が全員にコメントを書いた宿題を翌週に返却される授業だったのです。
   ある時に先生のコメントに○○は良かった。
   ◆◆はもっとこうすると良い。と書かれていて、
   自分でも前回できなかったことが改善され、更に調べていこうと思い、意欲がわいた。
 ⇒自分への評価がモチベーション、他人から認められたい・上昇志向

④力を入れた(入れなかった)授業内容、理由、行動レベル、結果の確認
 ⇒興味がない分野に対する行動の仕方、その時の行動レベルと能力レベルがわかる。

 

*例 私は大学生活で語学の勉強がしたいと思い、4年間語学の授業を取りました。
   2年までが語学の必修なので英語とフランス語をとっていました。
   3年では語学を辞める人が多かったです。
   将来のためにいろんな言語を話せるようになりたいと思ったので、
   3年からは中国語の授業も取ることに決めました。
 ⇒将来に対する努力、功利的、地道な行動

*例 3年時に履修していた『アジアの歴史と文化Ⅰ』はそれほど力を入れて勉強しませんでした。
   結果、評価もC(上から3つ目)でした。アジアにも、歴史・文化にも関心意識を抱いていない上に、
   一方的な講義スタイルだったので真面目に学ぶ気が起きませんでした。
   ただ、あくまで履修必須の単位数を稼ぐモノ、としか捉えていなかったので、
   悔しくもなんとも思いませんでした。
 ⇒自分にとって重要度がはっきりしており、それによって行動が変わりやすい

⑤今から考えると得意な授業の理由
 ⇒得意な知的能力、物事の進め方

 

*例 発想力というか、ポイントを見つけるのがうまいと思います。
   そのようなことが重要な科目や試験は得意です。
   例えば、2年生時に履修した『マスコミュニケーション基礎論』のレポート設問は、
   『最近の新聞記事を見比べてテーマを1つ決めて、そのテーマに対する各報道機関の姿勢の違いを論じろ』
   というものでした。
   どのテーマでも良かったのですが、私は担当教授が政治学専攻であることに目を付け、
   『この授業は政治好きだろう』と推測し、皇室の女系天皇問題をテーマに設定しました。
    教授好みのテーマだったのか、最高評価を得ました。
 ⇒目標達成へのポイント、その重要度の把握、俯瞰する力

ここまで見てきて学業に関して順を追い質問することが極めて有効だと気付かれたと思います。
しかし、「大学ごとに評価方式はばらばらだし、学生の成績を一括して見るのは不可能なのでは?」
と思われる方もいらっしゃるかと思います。
ここで有効にお使いいただけるのが大学成績データサービスです。

大学成績データサービスとは?

大学成績データサービスとは、企業が学生の成績を採用に活用しやすくなるように、大学ごとにばらばらな成績評価のフォーマットを標準化・データ化したサービスです。

 

学生が一度成績入力をすると、個人成績を無料で保管でき、いつでも応募企業に対して成績を送付することが出来ます。

個人成績データは面接時に使用するのが極めて有効です。各大学で異なる成績評価の段階や表記を記載してあるので、一目で成績の評価がわかります。また、DSSの調査による「考える力を厳正に評価している授業」に該当した授業に〇を付けていますので、あてはまる授業に関して学生に深く質問をすることが有効だと思われます。 

 

また個人成績データのみではなく、登録した学生のデータを一覧で見ることが可能です。各大学で異なる成績評価の段階や表記の違いなどを反映させてGPA換算をし、取得単位数に占める最高/最低段階の評価の割合なども確認することができるので、大学ごとにばらばらだった成績を比較検討することが出来ます。

このように、面接において、当社のサービスを使用しながら、成績や学業に関して質問することで、より学生の本質を見極めることが出来ます。

次回は、企業が成績を活用することで、企業・大学・学生の間にあった負のスパイラルはどうして正のスパイラルになるのか、改めてご説明させて頂きたいと思います。

文 / 辻 太一朗
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多くの企業が、面接場面でエントリーシートや履歴書を見ながら面接を進めるのではないでしょうか?

実はそれがストレス耐性や新型うつのリスクを判断する面接とは離れてしまう理由です。

ここではエントリーシートを俯瞰してみましょう。

・本人がやりたかったことを中心にエントリーシートが書かれており、それをもとに面接が行われる。もともとエントリーシートに書かれていることは、アルバイト、サークル等の課外活動でのイベントを中心に書かれているのではないでしょうか?

それらは、学生が自分の意志で、好きで始めている「やりたい活動」「モチベーションが高い状態の活動」が大半です。本人にとってやりたいことではなく、やらなくてはいけない場面での行動が書かれていることは少ないのではないでしょうか。

・やりたかった領域の中でも特に得意なこと、頑張ったことのみに焦点が置かれる。

また、エントリーシートには主に学生はやりたかった領域の中でも自分の伝えたいことのみを書いています。

例えば、得意なことや頑張ったこと、成果が上がったことなどを伝えています。逆に言えば伝えたくないことに関しては一切書かれていません。つらかった経験を聞いていても、本当につらい経験は書かれませんし、話されません。つらかった経験からの克服を通していい印象をもってもらえる内容を選んで書いているはずです。

・評価されやすいように話を脚色する。

やりたかったことの領域の中でも一部の得意なことや頑張ったことのみを伝えるばかりか、話の内容を脚色することも一般的になっています。

学生間では「話を盛る」という言い方をしますが、サークルの人数を変えて話したり、サークル内での役職を偽ったり、サークルで行ったイベントの結果を変えて話したりする場合も多いようです。

以上のようにエントリーシートや履歴書を使った面接、または何も使わない面接では結果的に
・本人にとってしたい活動、モチベーションの高い状態での行動で
・本人の伝えたいことのみの情報を
・本人の自己評価や脚色された話から
学生の本質を知る努力をしているのです。

皆さんが本当に知らないといけない、やらなければならないこと、モチベーションが高くない時にどのように行動するのか、きちんとこなすことが出来る人なのかを知るのは極めて難しいことです。

しかし、やらなければならないことに関して知る方法があります。多くの学生にとって学業はしたくないことであり、モチベーションが低いものです。つまり学業に関して面接で質問をするのは極めて有効なのです。

成績を活用することが採用活動において有効なのだということはお分かり頂けたと思います。

次回は成績をどのように使ったらよいのか、具体的な方法をお話します。

文 / 辻 太一朗
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