採用コラム

Column Vol. 43

「負ける人事」は法律にうとい

採用に関して意外とよく起こるトラブルがあります。
自社と取引のある企業から中途採用の応募があったとしましょう。
たまたまその企業の担当窓口が同期で顔見知りだったため、人事担当者が「あの会社の○○さん、知っている?」と聞いてしまうのです。

「○○さんってどういう人?」
「人事のお前がそれを聞くということは、うちの会社に応募してきたのか?」
「いや、俺の口からは言えないんだけどね」

こんな風にして応募の事実をバラしてしまう。さらに担当窓口が本人に「○○さん、うちに応募しているそうですね」と言ってしまい、エージェントにクレームが入るというトラブルがけっこうあります。

候補者の応募の秘密は厳守しなければなりません。
特にエージェント経由の候補者の場合、企業とエージェントの間では秘密保持契約を結びますから、漏えいは秘密保持契約違反にもなります。

また、こんなトラブルもあります。
A社であるプロジェクトの立ち上げをやっていたという候補者がB社に応募してきました。
面接での評価は高くほぼ採用が決まった段階で、たまたまA社のプロジェクトリーダーと知り合いだったB社の幹部が「こういう候補者がうちに応募してきたけど、なかなかいい人だね」と直接会った際に話をしたところ、プロジェクトリーダーは「え、そんな人は知らないな」と答え、採用は見送られた……。

候補者が本当にプロジェクトの立ち上げに参加していたか否かという話の前に、応募の秘密を軽はずみに第三者へ話すことは情報漏えいであり秘密保持契約違反です。

「転職活動が会社にばれていられなくなった。どうしてくれる!」と損害賠償を請求され、実損が発生する恐れもあります。
情報漏えいする人は気軽に悪気なくやっているのでしょうが、その罪は極めて重いことを知らなければなりません。

人事のキャリアをある程度持っている人であればこうしたミスを犯すことはまずないと思いますが、危ないのは人事のキャリアが浅い人、そして社長を含めた経営幹部です。
応募者の履歴書を見て「この会社なら知り合いがいるから問い合わせてみよう」などと言い出したら、「社長、それはダメです」とストップしなければいけません。

候補者のリファレンスを取りたい場合は、本人の承諾を得て行うか、「こういう文書をもらってきてください」と本人を通して行わなければ職安法違反です。
ところが最近、こうした違反が増えつつあるので、極めて危険な状況だと私は危惧しています。

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採用に負ける担当者は「遅い人」。前回の連載ではそう指摘しました。
一つひとつの連絡が遅く、選考プロセスに時間がかかり、内定を出すのが遅いとなれば、よい人材ほど他社に奪われてしまいます。

こう言うと採用担当者のなかには反発される方がいるかもしれません。

「いくら自分がお願いしても、部門からの返事が遅いのでスピードアップは無理」
「人事が頑張ってもラインは現業優先なので、どうにもならない」
確かに部門の力が強く、人事があまり強く言えない会社は少なくありません。
そうでなくても放っておけば部門の社員にとって最優先は自分たちの業務で、採用業務は二の次になってしまいがちです。

しかし、そうした状況を「仕方がない」と放置していれば採用選考のスピードアップができず、他社に負け続ける結果になってしまうでしょう。

部門は採用業務を後回しにしがち、という問題はどうすれば解決できるのか。
結論から述べると「採用業務はすべてに優先する」というスタンスを組織に根付かせることです。
これができている会社は人事と部門間のパワーバランスなど関係なしにスピードが速く、採用がうまくいっています。

採用の優先順位を高くしてうまくいった例としてはかつてのリクルート、最近ではディー・エヌ・エーが挙げられます。

しかし人事担当者がいくら採用業務の重要性を力説しても、部門の人からすると
「自分で自分の業務を優先しろと言っている」と受け取られかねません。
「採用業務はすべてに優先する」という方針を根付かせるには、やはり社長が言わないとダメです。

人事が部門にお願いして対応を早めてもらうことも大切ですが、根本的には「採用を優先しなければ」と本人に思わせたほうが手っ取り早い。
それには組織のトップである社長に方針を明確に打ち出してもらう必要があります。

そして社長に「採用業務はすべてに優先する」と言わせるのは人事の仕事です。
採用を含め人事は社長の重要な仕事の一つで、とりわけ人事担当役員や人事部長は社長とコミュニケーションをとっている時間が長いはずです。
その時間のなかで、社長に「採用業務はすべてに優先する」と言うように仕向けていくのです。

では、次回は採用に関して起こるよくあるトラブルについてお話させていただきます。

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