採用コラム

Column Vol. 47

「勝つ人事」はエージェントを上手に活用する

人材エージェント側からみると、うまく我々を活用していただいている会社と、そうでない会社があります。今回はその違いについて考えてみます。

私たちが提供している価値は「企業力を超える採用力」です。たとえば最近急成長したベンチャー企業のA社が採用募集をかけても、実績のある優秀な人はなかなか応募してきません。しかし有名な外資系コンサルティングファームの募集なら、そういう人もたくさん応募してきます。

そして外資系コンサルに応募してきた候補者と私たちが面談をして話を聞くと、「この人はA社のほうが向いているのではないかな」と思う場合もあります。そこで私たちが「A社はどうですか」と提案し、ていねいにご説明すると「A社もよいかもしれませんね」という話になったりします。

かくして本来なら外資系コンサルに受かるような人材が、ベンチャー企業を選択するということが起こります。エージェントをうまく活用している会社は、このようにエージェントの「企業力を超える採用力」を使い必要な人材を獲得しています。

では、エージェントをうまく活用している会社の人事は、そうでない会社の人事と比べてどこに違いがあるのか。それは、候補者を口説くために必要な情報の共有です。エージェントが「企業力を超える採用力」を発揮し候補者を口説くにはその会社を語り、候補者を説得できるようさまざまな情報をいただく必要があります。

なかにはさらに一歩進み、私たちをその会社のファンにしてしまう会社もあります。そうした企業はエージェントを「自社の採用を成功させるためのパートナー」と位置づけ、かなり踏み込んだ情報を提供されています。

「あっせん会社はよく選ぶべし。彼ら彼女らは自社の採用宣伝マンだから、宣伝してもらえるようにいろいろなよい情報を提供しなさい。決して業者扱いしてはいけない」

以前、あるベンチャー企業の経営者がこんな内容のコラムを書いていました。まさにこのようなアプローチで、人材エージェントをファンにしてよい人材を獲得しているのです。

一方、人材エージェントをうまく活用されていない会社は、情報提供にあまり熱心ではありません。残念ですが、「推薦状だけ出してくれれば、あとはこちらでやりますから」という会社もあります。エージェント側としては、これだと候補者を口説くのが難しくなるわけです。

ただし、そうなるのは仕方がない側面もあります。身内の業界の恥をさらすようですが、「自社の採用を成功させるためのパートナー」という期待に応えられるレベルのエージェントがどれだけあるか、という問題があるからです。

レベルの低いエージェントに当たり続けていたら、エージェントへの情報提供に熱心でなくなるのも必然です。この点、人材あっせん業界にいる者は姿勢を正し、自分たちがクライアントや候補者にとってなくてはならない存在かを常に問い直さなければいけないと自戒しています。

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優秀な採用担当者の共通点は、視点の高さにあります。要は一介の人事社員でも自社のビジョンについて情熱的に、しっかり語ることができるのです。

自社がどこを目指し、何を行おうとしているのかを情熱をもって人事担当者が語れるのは、トップとの距離が近いからです。経営者と人事の距離感は企業によってかなり異なり、よい採用担当者は経営者に近いところで仕事をしています。

採用担当者が社長とよく話をしていなければ、よい人材は採用できません。採用とは社長のビジョンを実現するにあたり、社内の人材だけでは足りないから行うものです。したがってよい採用には社長のビジョンの理解が欠かせず、社長とよくコミュニケーションがとれている必要があります。

とくに中途採用における「よい人材」の条件は、経営環境の変化によってコロコロ変わります。その時々における自社にとってのよい人材を、採用担当者はタイムリーに把握しているかどうかが問われます。

力不足の採用担当者はこの点が弱く、把握しているよい人材の情報が古いという事態がよく発生します。これが如実にあらわれたのがリーマン・ショックのときでした。

リーマン・ショックのような緊急事態が発生したら、よほどの事情がない限り中途採用を行う会社はありません。それにも関わらず「しばらく中途採用をストップします」と我々エージェントに連絡してきた会社は3割程度でした。

残りの会社は採用活動をそのまま継続していましたが、ふたを開けてみると受注額はリーマン・ショック前の3分の1程度に激減しました。

何が起こっていたのかというと、どの会社も経営陣はリーマン・ショックを受け、中途採用は当然ストップだと考えていました。ところが社長や経営陣とコミュニケーションがとれていない採用担当者は上から何も言われないので、そのまま採用活動を続けていたのです。
そして最終面接段階まで話が進むものの、「こんな時期に採用なんかできるか」ということで社長にバサバサ落とされる。 当時はそんな事態が多発しました。

では、どうすれば採用担当者は社長との距離を縮めることができるのか。

そもそも「言われたことをやっていればいい」という感度の鈍い採用担当者には、社長は大事な話をしようとはしません。逆に感度がよく、経営者的な視点を持っている採用担当者とは、大事な話を積極的にしようとします。

たとえば社長の方針でしばらく若手層の採用を積極的に行ってきた会社で、採用担当者が現場の話を聞きに行き「そろそろ部下指導のできる中堅を採用しないとまずいぞ」という意見をキャッチして、社長が気付く前に「そろそろ中堅を採用したほうがよいのでは」と提案できるかどうか。

こういう採用担当者とは、社長は話をしたいと思うでしょう。

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