結果が合格でも不合格でも、面接後に的確なフィードバックをいただくと「ちゃんと候補者を見てくださったのだな」と紹介会社は感激します。
こちらがハッと気付かされるような指摘や、候補者本人がその後の転職活動に役立てられそうなポイントをわかりやすく伝えてくれる担当者の方に対し、「一事が万事」の安心感から紹介会社は安心して候補者を推薦できるようにもなります。
的確なフィードバックができる採用担当者は、面接でどんなやり取りがあったかはわからなくても、そのクオリティの水準は容易に想像できます。
実際に面接を受けた候補者から「素晴らしい面接官でした」「あの人がいるので会社のファンになりました」と伝えられるケースもあります。なかには採用担当者にほれ込んで、転職を決断した人もいるほどです。
これは社員数50人ほどの中小企業が、CFOを採用したときのことでした。この中小企業には採用全般を担当している非常に優秀な役員の方がいて、一次面接から採用プロセスに関与しています。
CFOとして採用が決まった候補者はこの役員との面接に感激し、「あなたと一緒に仕事ができるなら私はぜひ御社に行きたいと思います」と言ったそうです。
この候補者には他社からもっとよい条件のオファーが出ていました。普通であれば、この候補者は他の会社に転職していたと思います。つまり、この中小企業は通常では採用の難しい人材を採用担当者の魅力によって獲得したのです。
このケースが示すように、採用担当者自身が持つ人間的魅力は、自社の採用力に大きく貢献します。ただし、当たり前のことですが、採用力を向上させるほどの人間的魅力は一朝一夕には身に付きません。長期間にわたって本気で仕事に打ち込み、能力と人格を磨いていく必要があります。
それは大変な道ですが、採用の仕事は一生を懸けるに足る仕事だと私は思います。会社の成長に直結する業務であり、自社の経営のことも業種・業界のことも考えなければいけません。新卒も中途もグローバルもあります。
何より採用担当者はある意味、雇用という一生ものの商品を売っているのですから、「あなたと一緒に仕事をしたい」と候補者に言われる地点を目指すべきだと思います。
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人材エージェント側からみると、うまく我々を活用していただいている会社と、そうでない会社があります。今回はその違いについて考えてみます。
私たちが提供している価値は「企業力を超える採用力」です。たとえば最近急成長したベンチャー企業のA社が採用募集をかけても、実績のある優秀な人はなかなか応募してきません。しかし有名な外資系コンサルティングファームの募集なら、そういう人もたくさん応募してきます。
そして外資系コンサルに応募してきた候補者と私たちが面談をして話を聞くと、「この人はA社のほうが向いているのではないかな」と思う場合もあります。そこで私たちが「A社はどうですか」と提案し、ていねいにご説明すると「A社もよいかもしれませんね」という話になったりします。
かくして本来なら外資系コンサルに受かるような人材が、ベンチャー企業を選択するということが起こります。エージェントをうまく活用している会社は、このようにエージェントの「企業力を超える採用力」を使い必要な人材を獲得しています。
では、エージェントをうまく活用している会社の人事は、そうでない会社の人事と比べてどこに違いがあるのか。それは、候補者を口説くために必要な情報の共有です。エージェントが「企業力を超える採用力」を発揮し候補者を口説くにはその会社を語り、候補者を説得できるようさまざまな情報をいただく必要があります。
なかにはさらに一歩進み、私たちをその会社のファンにしてしまう会社もあります。そうした企業はエージェントを「自社の採用を成功させるためのパートナー」と位置づけ、かなり踏み込んだ情報を提供されています。
「あっせん会社はよく選ぶべし。彼ら彼女らは自社の採用宣伝マンだから、宣伝してもらえるようにいろいろなよい情報を提供しなさい。決して業者扱いしてはいけない」
以前、あるベンチャー企業の経営者がこんな内容のコラムを書いていました。まさにこのようなアプローチで、人材エージェントをファンにしてよい人材を獲得しているのです。
一方、人材エージェントをうまく活用されていない会社は、情報提供にあまり熱心ではありません。残念ですが、「推薦状だけ出してくれれば、あとはこちらでやりますから」という会社もあります。エージェント側としては、これだと候補者を口説くのが難しくなるわけです。
ただし、そうなるのは仕方がない側面もあります。身内の業界の恥をさらすようですが、「自社の採用を成功させるためのパートナー」という期待に応えられるレベルのエージェントがどれだけあるか、という問題があるからです。
レベルの低いエージェントに当たり続けていたら、エージェントへの情報提供に熱心でなくなるのも必然です。この点、人材あっせん業界にいる者は姿勢を正し、自分たちがクライアントや候補者にとってなくてはならない存在かを常に問い直さなければいけないと自戒しています。
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