新卒採用と中途採用で大きく異なる点に、
競合他社の存在の見えやすさ・見えにくさがあります。
基本的に新卒採用は同じ時期にゴングがなって一斉に始まるうえ、
学生がたくさんの企業に応募していることは前提になっているので、
企業には「この学生なら採用したい会社は他にもたくさんあるだろう」
との意識が働きます。
ところが中途採用の場合、採用で競合する他社の存在はなかなか見えにくい。
こちらから聞かない限り、候補者は他社も受けていることは口にしないので、
競合他社の存在は新卒採用に比べあまり意識されません。
ところが現在の中途採用市場は需要が供給を上回っており、
優秀な人材は引く手あまたの状況です。
しかも最近は競合他社とは別のライバルが人材争奪戦に加わるようになりました。
それは候補者がいま働いている企業です。
つまり勤務している会社から強く慰留され、
内定が出たあとに転職をやめて残留するケースが増えているのです。
「あなたの希望通りの仕事をやらせてあげます。転勤もしなくていいから」
「給与をアップしましょう。ポジションも二階級特進にします」
そんな風にあの手この手で慰留しているのです。
なかには経営者や担当役員が出てきて
「これまできちんと君を評価できなくて申し訳なかった」と謝る会社もあります。
もちろん退職を申し出た社員の慰留は昔から行われていることですが、
人材の需給がひっ迫しているため企業が非常に力を入れるようになっています。
視点を人材側に移して見ると、中途採用市場が活況である現在は
選択肢に恵まれている状況だといえます。
そのなかでよい人材を採用するのに必要になるのが
前回申し上げた「採用に対して本気の姿勢」であり、
「何が何でもこの人を採るんだ」という気持ちです。
ところが経営者は候補者が慰留されて迷いを示したり
なかなか決断できなかったりすると、「来ても来なくても好きにすればいいよ」
という態度を取りがちです。
そこには「ぜひこの事業をやりたいという思いを持って来てほしい」、
「熱い思いを共有してほしい」という経営者の気持ちがあります。
しかし複数の魅力的な選択肢を目の前にした候補者が、
いろいろ迷うのは当然です。
これは自戒を込めていうのですが、他の会社からもオファーが出たり
いまの会社から強く引き留められたりした候補者が迷うのは当たり前。
迷う姿を見て「来なくてもいいよ」という態度を取ってしまっては、
よい人材を採用することはできません。
次回は「良い人を採用する」ために重要なことについてお話しします。
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「よい人がいたらぜひ採りたい」
そんな風に経営者や採用責任者の方から声をかけられることがあります。
しかしこういう意識でいる企業は、残念ながらよい人を採用することはできません。
なぜなら、人材採用は戦いだからです。
「よい人がいたら――」という待ちの姿勢でいたら、
優秀な人材ほど他社にさらわれてしまいます。
就職氷河期でも、たとえば慶応大学の体育会キャプテンは商社や銀行から
山のように内定をもらっています。
まして人材争奪戦が起こっている現在の状況下では、
そうした人を獲得するのはずっと困難です。
人材の需給がひっ迫している現在、「よい人材」を採用するには
まず求める人材の明確化が必要であるとこれまでに述べましたが、
同時に経営者や採用責任者は採用に対するマインドセットを
「来るのを待つ」から「採用は戦いである」「本気で採りにいく」へ改める必要があります。
世の中の多くの企業は人材を募集し、応募してきた人に上から1番、2番と順番を付けて、
1番がノーなら2番、2番がノーなら3番を採るという採用を行っています。
要するに、来た人のなかからよい人を採るというやり方。
ところが現在は採用意欲の高い企業が増加する一方、
人材市場に出てくる優秀な人材の絶対数は増えていません。
つまり、自社の募集に応募してくる人材の質も量も落ちている状態です。
このやり方では優秀な人材の採用はなかなか難しい。
こうなってくるとあらゆる手段を講じ、自社にとってのよい人材の獲得に動く必要があります。
私たち人材紹介会社へのご依頼も増えているのもそのためでしょう。
見方を変えると私たちがお客様の傭兵として人材市場で戦っているともいえますが、
当事者ではないのでそこにはどうしても限界があります。
「あなたの力なら業界トップのA社に行けますが、業界2位のB社はこんなに面白いですよ。
ぜひ一度、B社の社長とお会いしてみませんか」
こんな風に日々私たちは戦っていますが、
最後の最後、魂に訴えて候補者に決断してもらう場面はその会社の人にしかできません。
ですから「よい人がいたらぜひ採りたい」ではなく、
「よい人がいたら連れてきて。私が口説くから」という採用に対し本気の姿勢を
持っていただいている会社のほうが、よい結果を得られる確率は高まります。
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