よい人をいま採用するのは難しいが、いずれ景気が悪くなれば採れるようになるだろう。
そんな見通しを持っている方もいるかもしれません。
しかし中長期的に見ると景気に関係なく、優秀な人の採用はますます難しくなっていくでしょう。
その根拠は人工知能(AI)の急速な発達です。
Googleの自動運転車やIBMのワトソンの登場は社会に大きな衝撃を与えました。
まだ現実味のない話とお考えかもしれませんが、人工知能はすでにさまざまな産業で
導入が進められています。
人材紹介業においても企業と候補者のマッチングに人工知能が使われています。
現在は人手不足が経済の足を引っ張る懸念材料になっていますが、
もしかすると人間がコンピューターに仕事を奪われるスピードのほうが早いかもしれません。
人工知能がどんどん発達しさまざまな場面に導入されるようになると、
コンピューターがやってくれる仕事はだんだん淘汰されるようになり、
人間に残されるのはコンピューターにはできない右脳的な仕事や、
コンピューターと人を使ってより付加価値の高いものやサービスをつくる仕事になります。
結果、そうした優秀な人材の需要はいま以上に高くなっていくのです。
一方、人工知能の発達はビジネスにも影響を与えます。
人工知能がデータをどんどん蓄積してマッチングの精度を高めていけば、
ベテラン社員のマッチング能力を売りにしていた人材紹介会社は淘汰されるかもしれません。
そうなると生き残るためには別の価値を磨いていく必要性が強まります。
以前、このコラムで自社における「よい人材」の定義をせよという話をしましたが、
こう見ていくと人工知能の発達という視点からも自社に必要な人材を
再定義しておく必要があると思います。
つまり、人工知能が自社のビジネスに与える影響を予測し、人工知能に代替されずに
生み出せる価値は何かを考え、その実現に必要な人を定義するのです。
そして新たに定義した「必要な人」はどんな能力の持ち主で、
その能力はどうすれば測定できるのか。
また、その能力の持ち主はどんなところにいて、
どうすればアプローチできるのかといったことも考えなければなりません。
大企業であればそういう人材をたくさんつくれるよう
大学に寄付講座をつくったりするのもよいでしょう。
これまでの延長線上で採用数を追いかけるのではなく、本当に従来の採用のあり方でよいのか。
自社の将来を担う人材はどんな能力の持ち主かを見直し、いまから手を打っておかないと
企業は今後、テクノロジーの発達につれてジリ貧に陥る危険性があります。
それでは次回は時代の変化に適応する人材採用についてお話しします。
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「よい人」を採用するプロセスを分解して見ていくと、最初には必ず「出会い」があります。
企業にとってこの出会いは、人材紹介会社や募集広告を通じてもたらされることが一般的ですが、
それだけとは限りません。
たとえば業界の集まりによい出会いがあるかもしれませんし、
自社に出入りしている取引先の社員や、社員のプライベートな付き合いのなかに
潜んでいるかもしれません。
私たち人材紹介会社にとって、知人の結婚式の二次会は格好の「出会いの場」です。
新郎新婦が優秀な人であれば、その友人も優秀な人たちが多い。
「この人は良さそうだ」と感じる人がいれば必ず声をかけ、仲良くなっておきます。
私の場合、スピーチを頼まれることが多いので「ヘッドハンティング会社を経営しています」
という話をからめてあいさつをします。
そうすると他の参加者と名刺交換をするときに「実は転職を考えておりまして……」
という話になったりもします。
人材の獲得競争が激しくなっている現在、よい人を採用するにはまず、
よい人と出会う機会を増やすことが大切です。
それには人材紹介会社や募集広告だけに頼らず、マネージャー以上の人たちは
意識的にいろいろな場に出かけていくことです。
出かけた場でこれはと思う人がいたら声をかけ、話し込んでジャッジしていく。
業界の集まりでよい人と出会ったが、その人を直接引き抜こうとすれば
競合会社なので血で血を洗う争いになってしまう。
そんな懸念が生まれる場合もあるでしょう。
そうしたときは私たちのようなヘッドハンターを使えばよいのです。
相手の名前も連絡先もわかっているので、ヘッドハンターとしては着手しやすい仕事です。
出会いの場を増やすときには注意点があります。
それは今一つな人ばかり見ているとそれが自分の基準になってしまい、
ジャッジを誤るということです。
よい人と出会うために出かける場は、ある程度は選んだほうがよいでしょう。
今後、人材のひっ迫感はますます強くなると予想される状況では、
幹部社員が総出でいろいろな場に出かけ、リクルーターとならなければ
人材獲得競争で勝利はできません。
次回は『採用戦略』についてお話しさせていただきます。
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