採用活動は自社という商品を学生や中途の転職希望者に売り込む仕事です。その意味では、営業と同様の仕事といえます。評価に関しても営業マンの成果が売上で計られるように、採用担当者は採用者数で計ることができます。そしてリクルートの採用担当者は営業マンと同様、お互いに競争させられていました。
リクルートでは1000人採用するために100人の採用担当者を配置していましたが、当然担当者によって採用者数にバラツキがあり、その結果が厳しく評価されていたのです。仮に4月1日に新卒のリクルーターが100人配属されると、10月1日の内定式と同時に85人は異動になりました。残される15人はリクルーターとして優秀な数字を残した人たちです。各リクルーターが採用した学生の数は5人から38人まで差がありましたから、その違いは一目瞭然です。
さらに2年目には15人が10人へ、3年目には5人へとどんどん減らされていき、4年目で3人になったあたりで、生き残ったリクルーターはマネージャーに昇格されました。採用部門には新人賞や最優秀拠点賞などの表彰制度もありました。まさに営業マンと同じモチベーションの与え方をしていたわけです。リクルーターを経由して現業部門に配属されると同期社員より一歩出遅れるハンデを負いますが、それでも採用部門出身者はみんな活躍しました。
学生に対し「俺はリクルートをこんな会社にしたい」と夢や目標を語っているうちに、リクルーターはどんどん饒舌になります。当初、語っている内容は誰かの受け売りでしかありません。しかし、話し続けているうちに言葉が自分のモノになり、自分自身がモチベートされていきます。だから採用部門出身者はとてもモチベーションが高く、成果を厳しく問われる中を勝ち抜いた経験もあって、みんな活躍していったのです。
7年間にわたり採用担当者として働いた私自身、新卒にせよ中途にせよ、自分が優秀な人材を口説いて入社してもらうことで、会社がより良くなっていくという強烈な実感がありました。自分が会社の未来を背負っている感覚と言ってもいいでしょう。リクルートではそうした感覚を入社1年目や2年目の社員が味わっていたのです。
一般的な会社の新卒1年目や2年目の社員といえば、見習い的なポジションにとどまり会社のビジョンを共有するところまでいくのは難しい。この差は非常に大きいと思います。見方を変えると、社員を採用活動に関わらせるとモチベーションが高くなり、社内の活性化にもつながるということです。この原理を活かさない手はありません
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[post_content] => 最も新卒の採用人数が多かった時期、リクルートでは1000人もの人数を採用していました。これだけの人数を確保するだけでも相当な労力です。その上、当然のことですが、優秀な人材だけを厳選していました。たくさん採用するには、まずたくさんの学生に会わなければなりません。自分の知り合いに声をかけていくだけでは、すぐに行き詰まってしまいます。そこで知り合った学生に別の学生を紹介してもらったりしながら、どんどん学生に会っていきます。
この活動をたくさんのリクルーターでやると、リクルート全体としてもの凄い数の学生に接触する結果になります。たとえばある年は早大政経学部の学生との接触率は8割を超え、東大工学部のある学科の学生とは全員に会いました。神戸大の経済学部にいたっては、接触率が100%を超えました。つまり、同じ学生に二度以上接触していたというわけです。挙げ句の果てに「日本にいなければ海外にいるだろう」という発想で、アメリカの大学に通っている日本人の学生まで採用の網を広げ、私を含め4人が送り込まれ、全米の主要大学での採用活動が行われました。
格好良く見えるかもしれませんが、実はアメリカに行ったのはよいものの、何の手がかりもありませんでした。そこでまずやったことは、各大学の校門の前に立ち、ずっと日本人が来るのを待ち続けることでした。そして東洋系の顔の人を見付けると「Do you speak Japanese?」と聞くのです。せっかく声をかけても、ほとんどの人は中国系でしたが。それでも2~3時間、そうやって待ち続けていれば日本人に会うことができました。そうしたら、その人を起点にその大学に通っている日本人学生にどんどん会っていくと同時に、日本人会の世話役を紹介してもらったり、大学の就職部に行ったりしながら、ゲリラ的に採用活動を繰り広げました。
そうやってアメリカで採用した人数は10数人。自ら海外に出て勉強する意欲のある人は、相当優秀な方が多かったですね。また、新卒採用だけではなく、企業派遣でMBAコースに来ている方とも知り合い、数年がかりでアプローチして採用に至ったケースもありました。
当時の採用市場は学生の取り合いで過熱していましたが、海外までリクルーターを派遣して採用を行っていた会社はまずないと思います。いかにリクルートの採用活動が熱心かつ極端であったかがおわかりになるでしょう。「採用に力を入れてもいい人が採れない」という嘆きをよく耳にしますが、ここまで熱心な会社はあまりないと思います。どの会社でも視野をもっと広げて見れば、採用に関してもう一歩踏み込んでできること、やれることが見つかるかもしれません。
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