年功序列・終身雇用慣行が一般的だった時代は、若い社員は仕事で多少厳しい目にあっても長期的には十分見返りが期待でき、それゆえ我慢を重ね、頑張ることができました。
しかし年功序列・終身雇用慣行が崩れ去った現在、入社してくる若い社員たちに
従来のような我慢する理由はありません。
この会社で頑張り続ければ何かよいことがあると思えなければ、
同じ会社で働き続けるモチベーションは維持できません。
ですから、経営者は雇用した社員に長く働いてもらいたいと思うなら、
「この会社で頑張ったら報われる」という何かを提示する必要があります。
目の前の仕事をしっかりやることでスキルが大幅に向上する、人としての成長が期待できる、将来独立できるだけの能力や人脈を獲得できる等々、いろいろなものが頑張って働き続けるメリットとして提示できると思います。
第80回で触れたように、自社の業務の存在意義や素晴らしさについて語りかけることもメリットの提示になるでしょう。
もちろん金銭的な報酬もその一つです。
ところが独りよがりな目標を掲げ、社員にメリットを提示した気になっている経営者を見かけることがあります。
たとえば、「みんなで頑張って会社を上場させよう!」と社員に号令をかけているのに、
社員に一切株やストックオプションを与えていない社長。
これでは社員が上場のために頑張る理由がありません。
「上場企業の社員になれる」では、社員にとってのメリットにはなりません。
経営者が上場を自分の目標に置くのはよいとして、それを社員と共有するには
彼ら彼女らにとって上場するとどんなよいことがあるのかを説明できるようにする必要があります。
「社員は自社株を額面金額で買えるようにします。いま20株で100万円のものが、上場を実現して5倍になれば500万円、
10倍になれば1000万円です。みんなでそうなるように頑張りましょう」
このように具体的なメリットを用意しきちんと説明すれば、社員も「上場に向かって頑張ろう」と思えるでしょう。
せっかく採用した社員がすぐに辞めてしまう「採用の失敗」を防ぐだけに留まらず、社員に一生懸命働き続けてもらうには、
社長は「頑張ったらどんなよいことがあるんですか」という社員の問いに対して明確な答えを用意する必要があるのです。
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[post_date] => 2017-11-01 10:33:00
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[post_content] => 新人が入社したとき、誰が教育係を担当するのか。
たいていの場合、直属の上司や少し年上の優秀な若手社員を教育係に任命することが多いでしょう。
この教育係のマッチングは新人を定着させる上で非常に重要ですが、意外に難しいものです。
単に優秀な社員を任命すればよいというわけではないからです。
ある会社に新人が転職してきたときのことです。
この会社の社長は教育係として若手のエース格をつけることにしました。
年齢は新人の少し上でモチベーションが高く、凄まじいほどの仕事量をこなし
卓越した成果を出している社員なので、そばで見ているだけでも
学ぶことがたくさんあるだろうと考えたのです。
その後、面談で様子を尋ねると新人はこんな感想を述べました。
「あの先輩は同じ人間とは思えません。働き方が超人的すぎます。
自分はとても先輩のようになれる気がしません……」
社長の狙いとは裏腹に、エース格の先輩社員が圧倒的な業務量をこなす姿を目の当たりにして「自分にはとても無理そうだ……」という挫折感を味あわせてしまったのです。
この社長は先輩社員と同じようになれと言っているわけではない。
君には君のやり方があるだろうから、それを確立すればいいとなだめましたが、
結局、この新人はその後間もなく退職してしまいました。
一方、配属された部署で直属の上司が教育係になることも多いと思います。
このとき、新人にとっておかしな上司の下につくほど絶望的なことはありません。
私自身も経験があります。
リクルート時代、仕事に不備があり上司がその上の上司から「なんでこんなことになったんだ?」と問われ、自分が命令したにも関わらず「やったのは私ではありません、丸山君です」と答えたときの衝撃は今でも忘れられません。
しかしその後、上司の上司が私を呼び出して「実際、どうなっていたんだ」と確認してきたのでありのままを伝えると、「やっぱりそうか」と言っていました。
彼は上司がおかしな人間であることをちゃんとわかっていたのです。
その後、私は別の部署に異動になりました。
上司との相性の悪さを認識してくれていたからの措置だったと思います。
おかしな上司の下に新人をつけると、辞められる可能性が高まります。
おかしいとまで言わなくても、相性が悪い組み合わせだとやはり長続きしない可能性が高い。
こうしたマッチングの相性もきちんと観察し、問題があれば配置換えするなどの措置が必要です。
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