公開日:2015.10.13
HRインスティテュートは、個人・チーム・組織の主体性を挽き出す“ウェイ・コンサルティング会社”です。現場に競争優位性をもたらす、“その企業らしさ”、ならではのウェイを起点に企業の経営力、チーム力、社員の個人スキル(人材育成)の強化を支援しています。そこで培ったナレッジをまとめた書籍も110冊以上出版し、近年はグローバル展開にも力を入れています。一方で社会貢献につながるソーシャル活動もアジアやアフリカの新興国で展開しており、同社が掲げる理念や哲学はさまざまな方面から支持を得ています。
株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長 稲増美佳子氏
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まずはHRインスティテュートの設立の経緯をお聞かせいただけますか。
HRインスティテュートは、いま会長を務める野口(吉昭氏)と役員の染谷(文香氏)とともに1993年に創業した会社です。もともと国内の独立系コンサルティング会社に在籍し、主にCIのコンサルティングやそれに伴うマネジメント改革などを手がけていたのですが、お互いに重なる価値観を持っていて、次第に「自分たちらしい組織を持ちたい」という意向を強くしていったんですね。その時、思い描いていたのは「ソーシャル・カンパニー」を創りたいということ。利益を上げるのは企業として当然の使命ですが、それをどう使うかということに対して、自分たちなりの思いがありました。
稲増さんのおっしゃる「ソーシャル・カンパニー」とは、具体的にどのような企業の形をイメージされているのですか。
営利を追求するビジネス活動と、社会貢献などのソーシャル活動を両立するということです。日本は恵まれた国であり、幸いにも私たちは知識や能力を磨く機会をたくさん得られる境遇で暮らしてきました。しかし地球上を見渡すと、学校に通うこともできなければ仕事に就くこともできない、不遇な環境に置かれた人々がたくさんいらっしゃいます。私たちが養ってきた知識や能力を、それを持たざる人々と分かちあうことができれば、世界をもっとより良くしていくことができるのではないか。そうした「シェアリング」の理念を掲げて、私たちはこの会社を立ち上げたのです。私たちは利益を上げても、それを溜め込んだり、また自らの懐に入れて贅沢しようという気持ちはありません。ビジネスを通してお客様からいただいた大切なお金を、社員への報酬や配当など企業としての責任を果たした上で、できるだけそれを社会に還元する形でシェアリングを実践していきたいと考えています。
コンサルティングビジネスを究めつつ、ソーシャルな観点を創業当初から強く意識されていらっしゃったのですね。
ええ。コンサルティングの事業が軌道に乗ってからは、新興国の人々の生活を支援する取り組みを数々実行に移しています。すでにアジアのベトナムやカンボジアで9校の小学校の運営を支援し、またアフリカのマダガスカルの医療機関にも継続的に必要な寄付を行っています。こうした活動は自ら現地に赴き、地域の方々と深く関係性を持ちながら進めています。日本でも3.11の震災後、すぐにプロジェクトを立ち上げて東北の復興支援に乗り出しました。このことは、新しいメンバーを採用する際にも事前にはっきりとお伝えしています。当社は売上が上がっても、外資系のように青天井で報酬を支払う仕組みではありません。もちろん相応の給料はお出ししますが、利益が一定水準を超えれば、それを世の中を豊かにしていくためのソーシャル活動に充てることを大切にしていますが、それでもいいですか?と。
そうした御社の理念に共感される人材を採用していらっしゃるわけですね。
そうです。加えて、私たちは創業以来「主体性を挽き出す」ということをミッションに掲げています。それも、この会社を立ち上げる以前からさまざまな企業へのコンサルティングに関わるなかで、日本人の主体性がなかなか見えない、また、日本の企業の中では主体性をなかなか出しにくい、という問題意識があったからです。私たちとしては、まだまだ主体性を発揮できていない個人に秘められたヒューマンリソース(内的資源→可能性)を掘り起こし、それを世の中のために使えるような形にしていきたい。「HR(Human Resource)インスティテュート」という社名にも、そうした思いが込められています。私たちの事業を通じて、日本企業において主体的に考えて行動できる人材を増やしていくことができれば、ますますグローバル化が進む昨今、我々日本人が世界に対してさらに良い影響を与えていくことができると思うのです。アジアなどの新興国発展の力にもなれるはず。ひとりひとりの中に眠るヒューマンリソースを挽き出し、社会的な課題を解決できる力を生み、世界をより良くしていきたいというのが私たちの変わらぬ思いであり、やはりそこに共感してくださる方を仲間としてお迎えしたいですね。
「主体性を挽き出す」ことをミッションに掲げているとのことですが、では、具体的にこれまでどのような事業を展開されてこられたのでしょうか。
HRIの立ち上げにあたって、私たちが志向したのは「プロセス・コンサルティング」です。すなわち、コンサルタントが主導して戦略を立案するのではなく、お客様を巻き込んでプロジェクトを組み、現場の方々が主役となってアウトプットを創り上げていくというスタイル。私たちは問題解決のための知恵やノウハウを提供し、ファシリテーションしながらプロジェクトを運営する役割を担っています。コンサルタント主導だとやはりお客様の主体性を挽き出すことはできないという反省があり、自分たちの会社を作ってこのプロセス・コンサルティングを究めたかったのです。
いまでは他のコンサルティング会社もこうしたアプローチを取り入れていますが、御社が先駆けていらっしゃったのですね。
そうですね。そして、こうしたプロセス・コンサルティングを私たちは「ワークアウト・プログラム」として体系化しました。このプログラムは、新規事業の立案などのリアルな経営課題に対して、現場が主役となってその企業ならではのアウトプットを創出するものであり、またプロジェクトを我々コンサルタントではなく現場がリードすることで、メンバーのビジネススキルやリーダーシップが磨かれ、次代の経営層として育っていくという人材開発も兼ねています。こうしたコンセプトを各業界の企業のお客様から評価され、おかげさまで多くのリピートをいただいています。
このワークアウト・プログラムは、まさに「主体性を挽き出す」という御社の思想を体現したものなのですね。
はい。そして、このプログラムを進めていく上で、私たちはプロジェクトのメンバーの方々の能力を伸ばすためのさまざまな教育コンテンツを開発してきました。ロジカル・シンキングやプレゼンテーションなどのヒューマンスキルから、マーケティングや営業などのビジネスメソッドに至るまで内容は豊富であり、ナレッジを書籍化して出版することにも私たちは早くから取り組んできました。当社のコンサルタントたちが執筆して刊行したビジネス書はいまや110冊を超えており、名刺代わりになっています。これらの書籍にはHRインスティテュートの思想や哲学が詰まっており、お客様が私たちの著書に触れてオファーをいただくケースもたくさんあります。また、コンサルタントたちが共同執筆して一冊の本をまとめていくことで、HRインスティテュートのウェイを共有していくプラットフォームとしても機能し、書籍の執筆は当社にとってもたいへん価値があるものだと思っています。さらに、こうして私たちが開発してきた教育コンテンツをもとに、知識と実践の両面からユニット単位で社員トレーニングを行う「ノウハウ・ドゥハウプログラム」を確立し、こちらも多くの企業のお客様からご評価をいただいています。
御社ならではの「ワークアウト・プログラム」と「ノウハウ・ドゥハウプログラム」がお客様に支持されて成長を遂げてこられたのですね。一方で、御社はグローバル展開も積極的に進められていますが、その背景をお聞かせ願えますか。
さきほどもお話しした通り、私たちはコンサルティングやトレーニングの事業のかたわら海外でのソーシャル活動にも力を入れてきました。ベトナムでの小学校の運営支援に関わった時、現地の方々とネットワークができて「ぜひベトナムでも人材育成をやってほしい」というオファーをいただき、ホーチミンとダナンに拠点を設けてマネジメント研修やホスピタル研修などを提供しています。また韓国にも進出していますが、こちらは当社の書籍を読んでファンになっていただいた韓国の方から「韓国でもHRインスティテュートの思想に基づいたコンサルティングをしたい」という申し出をいただいて、そうしたご縁から現地での事業がスタートしました。また、米国にも拠点を設けており、2015年には中国の上海にも新たな拠点を立ち上げました。
そうした体制のもと、将来に向けてはどのようなビジョンを描いていらっしゃいますか。
いま当社は設立23年目を迎えましたが、これから30年目に向けて「オープン」「ソーシャル」「グローバル」の3つのキーワードを掲げています。マネジメントはオープンに、事業はソーシャルに、そしてグローバルで価値のある企業になる。特にグローバルに関しては、アジアを中心にオールHRIという体制を強化していきたい。当社ほどの規模でベトナム・韓国・米国・中国に拠点を設け、ローカルに事業を展開している企業はそう多くはないと思います。ひとつのプラットフォームの上で、各国間での情報交流や人的交流をさらに深め、それぞれ自立して現地に貢献していくことができればと考えています。
さきほど、今後のビジョンに言及されていた中で「マネジメントはオープンに」というお言葉がありましたが、御社はどのようなカルチャーを持つ企業なのでしょうか。
端的に言えば「全員参画型経営」です。社内はきわめてオープンであり、たとえば当社は年に一度、全社員参加で合宿形式の「ビジョン・ミーティング」なるものを開催しており、そこでHRIが将来目指すべき姿を自由に対話しています。ちなみに当社は原宿の駅前に自社オフィスを所有していますが、それも以前にこのミーティングで「社内でプロジェクトやトレーニング、さらにはソーシャル活動もできる自らの基地を創ろう」というビジョンを掲げて実行に移したもの。私募債を発行して、私たちの取り組みに賛同してくださる知人や友人から資金を調達し、みなさんの力をお借りしてこのオフィスを実現しました。また当社では、社員ひとりひとりが翌年の自分の給料の額を、一定の幅の中で自己申告するシステムを取り入れています。これも全社員参加のミーティングにおいて、なぜこの額なのかを発表し、全員が納得すればそのまま希望が通ります。その前提として、社長の私をはじめ全員の給与額が過去10年に渡ってオープンになっており、その数字をもとに「いまの自分にはこれだけの価値がある」とプレゼンするのです。
社員みなさんの給与額がオープンになっているのですか?…それは驚きです。でもそれも「主体性を挽き出す」ことの一環ですね。
そう。「主体性を挽き出す」はHRインスティテュートの内部に向けても言えることです。この給与自己申告においても、自分の意思を発信して周囲に納得していただくことはどんなプロジェクトにおいてもきわめて重要なことですし、また周囲から自分の至らない点を指摘されることで新たな気づきもあります。結果としてその人の成長につながっていく。そのほか、当社では社内のメールが全員に届くようになっており、自分が関わっていないプロジェクトの様子や、あるいはマネジメントの意思決定のプロセスなども確認できます。これから組織が拡大するにつれて、こうしたシステムを運用していくのが難しくなっていくかもしれませんが、可能な限りこうしたオープンな姿勢を貫いていきたいと思っています。
では、御社は具体的にどんな人材を求めていらっしゃるのでしょうか。
現在の自分というよりも、未来へ向けてどれだけ自分が成長したいか、どれだけ自分の可能性を挽き出し世の中のためになりたいかという、右肩上がりのベクトルをお持ちの方を求めています。私たちも新しい人材を採用するからには、育てることを決してあきらめない覚悟です。コンサルティング経験のない方は、まずは人材育成の「ノウハウ・ドゥハウプログラム」のファシリテーターから経験していただき、そこで人の主体性を挽き出す経験を積んで、徐々に「ワークアウト・プログラム」が担えるように育てたいと考えています。そして何より重視しているのは、さきほども述べました通り、私たちのミッションやビジョンに共感していただけること。いまHRIでは、自らのビジネスをまっとうしつつ、新しい価値づくりにも時間を割き、ソーシャルでイノベ―ティブなことをやっていこうという気運がますます高まっています。そこに新しい仲間になれる方に、ぜひ参画していただきたいと思っています。
※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。
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