TOPインタビュー   株式会社メドレー

株式会社メドレー

公開日:2015.10.21

「医療ヘルスケア分野の課題を解決する」ことをミッションに掲げ、2009年に設立されたメドレー。日本の医療の現状に強い危機意識を抱くメンバーたちが、熱い志を持って事業に挑んでいます。日本の医療・介護現場の人材不足を解消するべく立ち上げた医療介護求人サイト「ジョブメドレー」 は、すでに国内でも屈指の規模に成長。そして2015年には、新たに開発した医療情報提供サービス「MEDLEY」をリリース。医師の資格を持つ人材が事業運営に携わっていることもあり、同社のビジネスはいま大きな注目を集めています。

株式会社メドレー 代表取締役医師 豊田剛一郎氏

Contents

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成り立ち

現場で抱いた強い危機感。日本の医療は、このままでは潰れる。

工藤

豊田さんは2015年2月に共同経営者としてメドレーに入社され、現在、医療情報サービス事業を率いていらっしゃるとのことですが、まずはご経歴をおうかがいできますか。

豊田

私はもともと脳神経外科医として、医療の現場に身を置いていました。高校時代に人体、特に「脳」の働きに興味を持ち、この不思議な臓器を究めたいと東京大学の医学部に進学しました。卒業後はまず浜松の病院で研修医を務め、都内の病院に移って脳神経外科医としてのキャリアをスタートしました。その後、脳神経分野の一部の研究は欧米のほうが進んでいたり、学生時代からアメリカの医療を経験したいと憧れていたこともあって、1年間、ミシガン小児病院で子供の脳の研究に従事しました。

工藤

医師として順風満帆なキャリアのようにお見受けしますが、何か豊田さんの生き方を変えるような契機があったのでしょうか。

豊田

医療に志を抱いて世界に入ったものの、研修医になった頃から「日本の医療は本当にこのままでいいのか?」という問題意識を強く覚えるようなりました。日本の医療システムが患者さんにとっては優れているのは誰もが認めるところですが、私が接した勤務医の方々は挙って「このままではきっといつか立ち行かなくなる」とおっしゃる。確かに医療の現場にはたくさんの課題がありました。地方の医師不足の問題などが世間で指摘されていますが、その一方で都心は医師が余っている。アメリカでは州ごとに各診療科の医師の数が決められており、第三者機関が主導する分配システムが機能しているのですが、日本は医師の希望が優先されるため、全体最適が図れない。皆保険制度についても、高騰する医療費をすでに大量の税金で賄っている状況であり、これからますます払う人が減って使う人が増えていくわけですから、将来破綻するのは目に見えています。せっかく良いシステムがあるのに、何も手を打たずにそれが潰れてしまうのはあまりに虚しい。そうした危機感を当時師事していた先生にぶつけると、『医療を救うような医者になれ、君ならできる』と鼓舞していただいて……医療に変革を起こすためには、医療の現場の外からコミットできる人材が必要だ。そう背中を押され、自分がやりたいことができる人材に成長できる機会を求めてマッキンゼーに転職したのです。

工藤

それで医師から経営コンサルタントに転身されたわけですね。マッキンゼーからメドレーの経営に参画されたのは、どのような経緯からですか。

豊田

実は、メドレーを創業した瀧口(浩平氏)は小学校からの友人で、アメリカ留学の頃からSNSでまた交流するようになったんですね。彼は医療系のスタートアップを手がけているとのことでしたが、自分には遠い世界だと思っていました。しかし実際に会って話をしてみると、彼は患者さんサイドから日本の医療が抱える問題にアプローチしていて、私は医療従事者サイドからアプローチしたいという思いがあり、お互いに通じるものを感じました。彼が2009年に立ち上げたのは、医療介護分野の人手不足を解消するための求人サイトの「ジョブメドレー」というサービスなのですが、すでに軌道に乗りつつあり、次は彼が『患者さんにダイレクトに届く情報サービスがやりたい』と言っていました。でも、彼としては、『自分は医師ではないので医療的な部分で判断ができない。医療の情報を一般の方々に届けるのなら、医師がトップにいないとダメだ。』という強い信念があり、ぜひ一緒にやってくれないか、と瀧口から誘いを受けて、こちらに共同代表として加わることを決意したのです。

株式会社メドレー

事業内容

日本の医療リテラシーを向上させることが、問題解決の土台となる。

工藤

では、御社では今後どのような人材を求めていらっしゃるのでしょうか。

豊田

医療介護の領域はけっして華やかではありません。私たちが手がけるビジネスも、流行りのWebサービスのように面白おかしいものではありませんし キャッチーなコンテンツで攻めていくというものでもない。逆にこうした地道な取り組みにやりがいを感じ、共に楽しめる人に参加していただきたいですね。言うなれば“パブリックマインド”を持っている人でしょうか。社会のために力を尽くせる人。最近当社に入社したメンバーもみんなそうです。たとえばリブセンスの元CTOだったり、リクルートやグリーで事業開発に携わっていたメンバーだったり、みんな非常に優秀で、おそらくどこに行っても活躍できるような人材であるにもかかわらず、「社会課題をこの手で解決したい」という強い思いを持って当社に参加してくれました。あと、仲間になっていただく方に求めるのは圧倒的な好奇心ですね。我々が取り組むビジネスは障壁が多く、一筋縄ではいきません。それを突破していくことを楽しめるかどうか。そのためにはやはり好奇心が大切だと思うんですね。

工藤

いまの御社には、本当にいろいろな経歴を持った人材が集っていらっしゃるのですね。

豊田

はい。医療情報サービス事業に関わるのは、医療従事者として現場経験があるメンバーが多く、メドレーで病院がひとつ作れるのではないかと思えるほど各専門職が集まっています。また事業を支えているのも、上場企業出身者からベンチャー出身者、さらには弁護士や会計士まで、いろんな特殊能力を持ったメンバーです。こうしたバックボーンの異なる人材が連携し、全員が主役となってフラットにタッグを組んで事業にあたっている。こんな会社はなかなか見当たらないと思っています。

工藤

事業会社やコンサルティング会社出身の方々も活躍できるのでしょうか。

豊田

もちろんです。まだまだ当社は発展途上の企業です。社内にはいろいろな問題が潜んでおり、成長を担保させるためにそれを解決していく“社内コンサル”のような存在も必要です。また、今後は“成長痛”も出てくるでしょうから、かつて成長企業で事業や組織をマネジメントした経験も活きると思います。「日本の医療を変えていくような、これから絶対世の中で必要なサービスを自分たちで創る」という志をお持ちの方であれば大いに歓迎します。

工藤

豊田さんが描く将来に向けてのビジョンをお聞かせいただけますか。

豊田

まずはこの医療情報提供メディアである「MEDLEY」を完成させることが大きな目標です。医療に関する必要な情報は、すべてこのサイトにストックされているという状態。しかし、やはりメディアを介してのサービスだけだと限界がありますので、「MEDLEY」が築き上げた情報を医療現場などリアルな世界で活用し、患者さんのためにも医師のためにも、そして日本の未来のためにもなるようなサービスを創っていきたいですね。まだ模索中ですが、日本の医療の未来のために誰かがやらなければならない。そしてできれば我々のビジネスで、国の医療や厚生のシステムそのものに影響を与えていきたい。本来あるべき方向へ、いま障壁となっているような規制を正面からきれいに突破していきたい。必ずできると信じています。

求める人物・今後の展開

“パブリックマインド”で、高揚感をもって障壁を突破していく。

工藤

そして豊田さんが新たに立ち上げたのが、Web上で医療情報を提供する「MEDLEY」なのですね。

豊田

はい。日本の医療が抱える問題を解決していくためには何が必要なのか、いろいろと経験して辿り着いたひとつの結論としては、日本の医療リテラシーをもっと向上させることではないかと。日本人は教育水準も高く、医療以外のリテラシーは総じて高いのに、病気のことや治療のことについては、みなさんあまりに知らな過ぎる。たとえば万が一、明日家族が突然倒れてしまったら、そうした状況を正しく受け入れられるかといえば、おそらくほとんどの方がパニックに陥ってしまうでしょう。それも病気についてきちんと理解していないからだと思うんです。その一方で、病気のことを詳しく知りたい時、あるいは病気について抱える悩みを解決したい時、実はそれをかなえられる場がいまの世の中にはほとんどないんですね。病気についての情報をきちんと提供するサービスなど、本来であればもっと存在してしかるべきですがないのです。ならば自分で事業として創ろうと考えたのです。日本の医療リテラシーを上げることが、きっと今の日本の医療を取り巻く問題みたいして解決の方向に働くはずであり、そのための土台を築きたい。こうした私の考えに瀧口も賛同してくれました。

工藤

豊田さんがおっしゃるように、さまざまな病気について詳しい情報が入手できるメディアがあれば、たいへん価値があると思います。しかし、なぜ今まで世の中に存在しなかったのでしょう。

豊田

医療情報というのはさまざまなファクターが絡んでくるため、きわめて扱いにくいんですね。正しさの定義が困難であったり、最新性や網羅性、多様性をどのように満たすかなど。多くの医師の方々に協力を得なければ実現するのは難しいですし、やって何の得になるのかという問題もある、だから誰も取り組んでこなかったのだと思います。それを果たすためには、医師自らが事業を運営し、本気でコミットして周囲のドクターの先生方を巻き込んでいかなければならない。それを我々が担おうとしているのです。当社には私を含めて医師免許を持っている人間が3人います。そして、MEDLEYにご協力頂いている、信頼できるたくさんの先生方がいらっしゃる。こちらから話を持ちかけると、みなさん日本の医療を変えなけばという強い思いを持っていらっしゃって、「こうしたサービスで患者さんに正しい情報を届けられるのはとても良いことだ」と前向きな姿勢を見せてくださります。まったく面識のない先生からも、このサービスの存在を知って「ぜひ協力したい」と連絡をいただくこともあり、すでに250人を超える医師の方々がコンテンツの作成に関わってくださっています。

工藤

豊田さんのように、医師の方が事業にコミットすることに意味があると。

豊田

医師の方々にとっても、患者さんにいつもお話ししていることを我々のサイト上にストックし、あらかじめご覧いただくよう誘導すれば、診療の際に患者さんとのコミュニケーションもよりスムースになり、もっと効率的な医療が可能になるはずです。医師にとっても有益なメディアにして、医療の現場に貢献したいと考えています。

工藤

たいへん意義のあるサービスですが、ビジネスとして成立させるのは難しいように思われます。そのへんはいかがですか。

豊田

おっしゃる通り、医療情報サービスはビジネス化するインセンティブが乏しいため、これまで誰も手がけてこなかったというのが実情です。我々はそこに挑もうとしており、色々と厳しい事業であることは間違いなのですが、それでも「良いサービス」を作れば必ず事業化できると思っていますし、それだけの人材が揃っていると確信しています。私のような医師もいますし、技術部門にも強力な人材が集っています。さらに、有名なITサービス企業などからもビジネス開発やマネジメントに秀でた人材が続々と参加しており、将来、大きな価値を生み出す絵は描けています。世の中の人々から「病気のことならMEDLEYと常識のように認められるようなサービスにしたいですね。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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