INTERVIEW

VC(ベンチャーキャピタル)インタビュー

投資先を大きく成長させることを何よりも重んじ、
起業家と緊密に伴走するグローバルファンド。

Eight Roads Ventures Japan

プリンシパル 鈴木 利衣奈氏
シニアアソシエイト 澤田 風雅氏

スタートアップ支援が社会を変える近道だと感じた。

まずは、お二人がEight Roads Ventures Japan(以下、Eight Roads)に入社されるまでのご経歴を教えていただけますか。

鈴木

私はもともと医師として医療の現場に携わっていました。医学部卒業後に都内の病院に勤務していましたが、現場は非常に忙しく医療従事者がみな必死で働いて何とか業務を回しているような状況でした。優秀な人材がすっかり疲弊し、このままでは日本の医療が崩壊するのではないかと危機感を抱き、次第にどうにか医療現場をもっと良くできないかという考えが強くなりました。そこで、一度業界の外に出て異なる視点から学びを得たいという思いでコンサルティングに注目し、縁あって2010年にボストン コンサルティング グループ(BCG)に転職しました。BCGでは主にヘルスケア領域を担当し、その間、米国に1年間留学してMBAを取得。その後、2018年にVC業界に転身してEight Roadsに参画しました。

鈴木さんがコンサルティング業界からベンチャーキャピタル(VC)業界に転身されたのは、どのようなお考えからですか。

鈴木

VC勤務経験のあるビジネススクール時代の同級生に話を聞き興味を持ったことがきっかけの一つです。BCGでは大手の製薬企業や医療機器メーカーへのコンサルティングが主な業務でやりがいもありましたが、医療現場へ変革を起こす種となるのはイノベーションをもたらすスタートアップであり、それを支援することが私のビジョンをより追求することにつながるのではないかと考えました。Eight Roadsから声をかけて頂いたことが縁となり、代表を務めるデービッド(ミルスタイン氏/Eight Roads Ventures Japan日本代表)と話し興味が高まったことで、当社への参画を決意しました。

澤田さんはどのようなご経歴でいらっしゃるのですか。

澤田

私は2017年に大学を卒業し、新卒でプロフェッショナルファームのYCP Solidianceに入社しました。YCPは現在、コンサルティングを主軸に規模を拡大していますが、私が入社した当時はスモールな案件へのPE(プライベートエクイティ)投資事業が中心で、私はそのなかで主に外食業界へのPE投資や投資先のバリューアップに携わりました。投資先の取締役を務め、ハンズオンで経営を支援する立場も担い、事業の成功に向けて力を尽くしていましたが、ちょうどコロナ禍が訪れて社会が一変するような状況に直面し、外食産業のような成熟したマーケットでシェアを奪い合うことに私自身、あまり意味を見出せなくなってきたんですね。もっと社会に新しい価値をもたらせるような仕事がしたいと考えていたところ、スタートアップ投資を通してイノベーションを起こせるVC業界に興味を持ったのです。

VCに興味をお持ちになられた澤田さんが、なかでもEight Roadsを選ばれたのはどうしてですか。

澤田

幅広く候補を検討しましたが、私はこれまでの経験もあって、投資先のビジネスをしっかりと理解した上で経営を支援したいという志向を強く持っていました。VCのなかには個社毎に深堀はせずにシード段階で多くの会社に投資をしていくファンドもありますが、私自身の興味としては、良い会社を厳選して大きなチケットサイズで投資を行い、投資後にハンズオンでしっかりとバリューアップしていくことにあったため、それがかなえられそうなグロースファンドを志望。なかでもEight Roadsは、グローバルファンドであることに大きな魅力を覚えました。スタートアップ支援は日本という狭い枠だけで完結するものではなく、世界の先行事例から社会の変化をいち早く捉えることが重要であり、米国、EU、中国、インドでも投資実績のあるEight Roadsならば、グローバルでのリアルな情報を常に入手することができる。こうした環境に身を置くことが、自らの学びにも大きく繋がると考えて入社を志望したのです。

広く浅くではない。自ら信じた企業に大きく投資し、共に成功を目指す。

あらためて、VCとしてのEight Roadsの特徴を教えていただけますか。

鈴木

私たちは、グローバルな資産運用会社であるフィデリティの資金を基に投資を行うVCであり、大きくテクノロジーとヘルスケアの領域を投資対象としています。ファンドとしてのEight Roadsの特徴だと私が感じるのは、EXITを急がないということ。私たちは、投資先がIPOやM&Aした後にも継続して成長できるかどうかが重要だと考えています。自らの収益を優先して早急にEXITするよりも、投資先の足腰をしっかりと鍛えて、長期的に大きく成長できる態勢を整えてからEXITしたいというのが私たちのフィロソフィーです。よく、日本のIPOはアメリカと比べてサイズが小さいと問題視されていますが、私たちは日本のスタートアップ及びVC業界を健全に変革していくことに貢献しようとしています。それが結果としてEight Roadsの信用を高めていくことになり、新たな投資機会を私たちにもたらしてくれると考えています。

澤田

付け加えるならば、ファンドの構造もEight Roadsは特徴的です。我々と同じようなファンドサイズのVCなら、おそらく一社につき数千万円から数億円程度で、広く浅く分散投資していると思うんですね。しかし、Eight Roads JapanはAUM(運用資産残高)が約750億円で、投資先が50社強。単純平均でも一社に15億円ほど投じている。「この企業は絶対に成長する」と信じた投資先に大きく張り、かつ、頼まれればなんでも手伝い、ともに大きな成長を目指すのがEight Roadsのスタイルなのです。ですから、投資先との距離感が非常に近い。経営陣とも絶えずディスカッションを重ねていて、他のVCならばスルーするような論点であっても最善解を求めて議論・思考する。株主視点から本当にあるべき経営の形をひたすら考えて議論し、意見が対立することを厭わない。投資先の価値を高めるために“NO”だと思ったことは主張しますし、こうして緊密に伴走して支援していくことがEight Roadsの投資戦略であり、それは私にとてもフィットしています。

投資先の成功に向けた強力なハンズオン支援もEight Roadsの特徴だとお見受けしますが、具体的にどのようなサポートを行っているのでしょうか。

澤田

投資先の経営者のディスカッションパートナーとして、あらゆる局面において戦略立案を支援しています。ときには事業計画を一緒に策定することもあり、Eight Roadsの各キャピタリストは経営者と同じレベルの視点や知見をもって投資先と伴走しています。一方、Eight Roadsが抱えるリソースを活用して、投資先のファンクションをサポートすることも可能であり、たとえば当社で人事を担う採用担当者は、投資先企業の人材採用もサポートしているんですね。投資先企業が成長してCOOやCFOが必要になれば、彼が持つナレッジやネットワークを活用して、ふさわしい人材を紹介できる。また、当社のマーケティング担当が投資先企業の情報発信をサポートしたりと、キャピタリスト個人で提供できる支援に、ファンドとして有するファンクションサポートを加えることで厚みを増していると思います。

鈴木

いま澤田がお伝えしたように、チーム戦で投資先をサポートしていくのがEight Roadsの大きな特徴です。多くのVCでは、投資先を担当しているキャピタリストのみが当該投資先を支援していく形だと思いますが、Eight Roadsでは直接その案件に関わっていないメンバーでも、必要に応じて果たせる役割があるのなら積極的に投資先をサポートしていきます。ダイバーシティのある組織を構成し、チームで投資をしてチームで実績を上げていこうというのがEight Roadsの文化なのです。

徹底的にディスカッションしあえる起業家と、私たちはタッグを組みたい。

これまでのお話とも関連しますが、いまVCが急増しているなかで、御社が起業家から選ばれる理由は何だと思われますか。

鈴木

先ほども澤田が触れましたが、こちらから一方的に押し付けるような支援ではなく、ディスカッションパートナーとして同じ目線で意見を交換し、議論を通して有益な知見を共有して成長を促していくのが私たちのスタイルで、そのような関係を常に目指しています。こうした関係を好む起業家の方々は、Eight Roadsに関心を寄せて下さるようです。

澤田

スタートアップ界隈では、Eight RoadsはVCとしてエッジが立っているというイメージもあるようです(笑)。我々は投資先企業に対して、声を大きくして相手の懐深く入り込んでいくので、たとえば「自分のことを信頼して黙ってお金を預けてほしい」というタイプの起業家の方には、おそらく合わない。逆に、たくさんの仲間を募って一緒の船に乗り、ゴールを目指していきたいという起業家の方にはハマりやすい。その点は我々も認識していて、投資先を検討する段階でEight Roadsのカルチャーとフィットするかどうかもきちんと見極めており、ミスマッチが起こらないように心がけています。

話題を変えて、Eight Roadsでのキャリアについておうかがいします。お二方ともコンサルタント出身ですが、VC未経験でEight Roadsに参画されて、何かギャップをお感じになられたことはありますか。

鈴木

コンサルタント時代に向き合っていたのは主に大企業の経営層で、ビジネスコミュニケーションも一定モデル化されて同じような価値観をお持ちの方々でしたが、Eight Roadsでお会いする起業家の方々は、バックボーンも千差万別で思考回路もみなさんユニーク。私がこれまで出会ったことのないような人たちばかりでした。それはとても刺激的で、起業家が描くビジネスプランの実現に向けて伴走するのはたいへん面白いのですが、一方でEXIT時の収益の分配であったり、結構シビアな交渉にも臨まなければならない。そうした生々しい場面を仕切るのは、コンサルタント時代にはあまり経験しなかったこと。苦労することもあるのですが、そうした経験も自分の幅を広げているように思っています。

澤田

私の場合、ギャップというか、いままさに乗り越えなければならない壁だと感じていることがあって、それは自分の専門性を獲得していくこと。たぶんこれは、20代でコンサルティングファームからVCに転職してくる人であれば、誰でも直面する壁だと思います。
コンサルティングファームでは、さまざまな業界の課題解決にあたるので、若いうちはどうしても専門性が得られません。しかし、キャピタリストは自分の専門性を研ぎ、トラックレコードを作っていかなければスタートアップ界隈から認められない。いま私はそれを強く意識しています。幸い私自身はSaaSを始めとしてBtoB Solutionの領域では複数の投資/Exitの機会に恵まれてきましたが、AI等の先端テクノロジーへの理解を掛け合わせてエキスパティーズを作り、起業家に背中を預けられるキャピタリストとして精進していきたいです。

鈴木

Eight Roadsでは、先にお話しした通り、テクノロジーとヘルスケアの2領域で投資活動を展開しており、この領域に関わる案件であればオールラウンドに投資が可能です。私の場合、もともとヘルスケアに知見があるのでこの領域を専門にしていますが、それだけに囚われる必要もなく、自分が貢献できると思われる案件には積極的に携わっており、キャピタリストの自由度が高いこともEight Roadsの魅力だと思います。

知的好奇心に溢れ、議論好きで自走できる人材であれば、ここで活躍できる。

お二人はEight Roadsでキャピタリストを担う醍醐味を、どこにお感じになられていますか。

鈴木

私は、医療の現場にイノベーションを起こしたいという思いでこの仕事に臨んでいますが、それを果たせるスタートアップと出会い、経営を支援できていることにとてもやりがいを感じています。たとえば、いま私が担当している投資先のひとつに、高度な専門手術に特化した医療クリニックの開業を支援する「SDPジャパン」という企業があるのですが、このスタートアップが実現しようとしているのは、まさに私が望んでいる世界。日々知的好奇心と想いを刺激されながら投資先の支援にあたっています。

澤田

Eight Roadsのキャピタリストは、シンプルに私の知的好奇心を満たしてくれる仕事です。常に自分の知らない世界に遭遇できるのが、とても楽しくエキサイティングでしたし、普通ならとてもお会いできないような方と直に接することでき、スタートアップ投資に対する意欲をあらためて掻き立てられました。これはほんの一例で、たとえば生成AIであったり、ブロックチェーン技術であったり、いま世の中で最先端を行く領域の専門家と接して新たな知識を吸収できる機会がEight Roadsにはふんだんにある。知的好奇心が非常に強い私のような人間にとっては、本当に恵まれた環境で自分を高められていると感じています。

鈴木

また、Eight Roadsはグローバルファンドであり、世界と関わる機会が多いことも私は大いに魅力を覚えています。特にヘルスケア領域では、姉妹ファンドである米国のF-Prime Capitalと共同投資をするケースが多いです。このF-Prime Capitalは50年超にわたってヘルスケア領域への投資を継続しており、北米のヘルスケア業界で知らない人はいない存在。F-Prime Capitalが持つ豊富な知見を導入しつつ、たとえば投資先のバイオベンチャーがグローバルで新薬をローンチする際などは彼らのネットワークを活用でき、投資先への貢献度も高い。こうしてグローバルであることも、私たちの大きな強みだと捉えています。

これまでのお話も踏まえて、どんな人材がEight Roadsにフィットすると思われますか。

澤田

議論好きな人のほうが合うと思いますね。投資先の経営者との距離が本当に近いので頻繁に議論しますし、社内においてもさまざまな案件について周囲から意見を求められる機会が多い。そしてEight Roadsでは若手のキャピタリストでも、何十年と経験を積んだ重鎮のパートナーと、ポジションなど関係なく対等に議論できる文化があり、価値のある意見であれば評価されて採用される。知的好奇心をもって新しい情報を常にキャッチアップし、それを自分なりに咀嚼していろんな関係者と積極的に議論できる、そんな人がEight Roadsには向いているのではないでしょうか。

鈴木

そこに付け加えるとすれば、自走できる人が望ましいですね。誰かに言われたからやるのではなく、自分の視点と発想で物事を進められる人。これはEight Roadsに限ったことではないかもしれませんが、キャピタリストというのは自ら仕事を創り出していくことが求められます。こうした素養をお持ちの人材であれば、Eight Roadsはダイバーシティを大切にしているので、どんなバックグラウンドの方でも歓迎しています。また、グローバルファンドなので英語力は求められますが、入社時は文書が読み書きできればOKで、オーラルでのコミュニケーションスキルは習得意欲があれば問題ありません。もしEight Roadsでのキャリアに興味をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ一度私たちとお会いいただき、みなさんが楽しく働ける場であるかどうか、ご自身で判断いただければと思っています。

鈴木 利衣奈氏

PROFILE

Eight Roads Ventures Japan

プリンシパル

鈴木 利衣奈氏

慶應義塾大学医学部卒。2006年から東京都立大塚病院に医師として勤務後、疲弊した医療の現場を変革できる力を身につけたいとボストン コンサルティング グループへ。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得し、そこでスタートアップが生み出すイノベーションに大きな可能性を感じてVC業界に興味を持ち、2018年よりEight Roads Ventures Japanに参画。

澤田 風雅氏

PROFILE

Eight Roads Ventures Japan

シニアアソシエイト

澤田 風雅氏

東京大学教養学部国際関係論文科卒。新卒でYCP Solidianceに入社し、主に外食業界を中心としたPE投資および投資先のハンズオン支援に従事。スタートアップ投資によって世界に新たな価値をもたらしていていきたいという思いから、2021年よりEight Roads Ventures Japanに参画。

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